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HUNTER×HUNTER 37巻(No.381~390) 本誌版まとめ

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※既刊の36巻までは各自読んでね。

36巻時点での王子達の生存状況一覧。

・モモゼはNo.368(35巻)にて暗殺される。

→No.372(36巻)にて、第5王妃スィンコスィンコ所属でモモゼ付きの警護兵タフディ(上位王妃からすると監視兵の役目を持つ)による念能力を用いた犯行だと判明。

 

■No.381◆捕食

BW号の3層という、本来カキン王族が居ない場所にて第11王子フウゲツが発見される。

ハンタ協会側に発見・保護され、12支んのミザイストムに尋問を受けるも黙秘を貫いたため、元の場所に戻されることとなる。

フウゲツは突如現れた扉(霊獣の念能力)の効果を試して居たのだが、第3層から戻れなくなったことで自身だけでは「目的地に行く扉」しか出せず、No.374(36巻)で姉である第10王子カチョウの寝室に移動した際には自分の部屋に戻れたことから「帰りの扉」はカチョウにしか出せないことを学ぶ。

 

しかし、今回のことでフウゲツの能力が空間移動系の能力であることが一部の者に感付かれてしまうだろう。

緘口令を敷いたとしても人の口に戸は立てられぬことは世の常。

そして戦闘に不向きの能力だと分かれば敵側から暗殺の手立てが立てられてしまう。

 

ミザイストムは、カチョウの警護兵であるハンター・センリツに、

“カチョウ・フウゲツ両王子の言動には不自然な点が多く、何らかの方法で逃走を画策している可能性が高いこと”

“警護と並行し逃亡防止にあたるように”

と指示をしたが、実はカキン側からの盗聴の可能性を考慮した符丁(暗号)によるメッセージで、“カチョウ・フウゲツの逃走をサポートしろ”というものだった(読者にはNo.383で明かされる)。

センリツは、キーニと共に次の晩餐会の時に、カチョウ・フウゲツを船から逃がすことを画策することとなる。

 

その一方。

第8王子サレサレの部屋で警護という名の下、暗殺を目論んでいた第1王子ベンジャミンの私設兵リハンは、サレサレの守護霊獣の能力を読み切ったと判断し「異邦人(プレデター)」を発動。

※相手の能力を自力で理解すればするほど、相手を凌駕しやすい念獣を創り出せる能力

 

結果―サレサレの霊獣は仕留められることとなった。

リハンは能力使用後の48時間念能力を一切使えなくなるため、ベンジャミン私設兵14名の中で最も暗殺向きの能力を持つウショウヒと警護を交代。

■ウショウヒの能力「殺人を無罪にする方法」

まだ明確にはなっていないが、蜂ほどの大きさ(?)の「虫射球(ニードルボール)」を用いる能力の様で、標的がウショウヒから半径20m以上離れると強制解除される。

また「虫射球(ニードルボール)」の羽音は非能力者には聴こえないため(=簡易的な“念能力者判別装置”としても使える)、非能力者を標的にする場合は容易な分、効果が出るまでの時間が大幅に増えるという(具体的な時間は不明)

しかし「虫射球(ニードルボール)」が見つかって、“直接標的から取り除かれた場合”には二度とその標的には能力が効かない縛りがある。

 

■No.382◆覚醒

第9王子ハルケンブルグ(以降ハルケンと表記)は父親でもある国王ナスビーに継承戦という名の殺し合いの中止を求めるべく、嘆願書を渡しに行っていた。

国王に直談判という訳には行かず国王の部屋の前にいる護衛達に渡すだけなのだが、ハルケンは護衛の国王軍を油断させるために平和裏にことを進めていた。

そして4日目にして、ついに国王の護衛達の銃を下ろさせることに成功し、その隙を狙い護衛達に銃を突付け国王の部屋へと進入した。

 

ハルケンは革命を起こす覚悟であった。

父親が継承戦中止を宣言すればよし、しなければナスビーを殺して自身が王になることで継承戦を止めようとしていた。

しかし案の定ナスビーは中止を拒否し、ハルケンは銃の引き金を引いたのだが―

銃弾は届かず、

自殺も自らの霊獣によって阻まれた。

 

ハルケンはナスビーから「トロッコ問題」を知っているかと問われる。

「線路上にいるのは兄弟王子と国民…その2択とでも言いたいのか?」

と憤るハルケンに対し、

「残すべきは国であり国民の命に決まっており、問題は“誰が”レバーを引くか」

で、ハルケンらしくもなく正常に頭が働いていないとナスビーは冷静に叱責する。

 

これまでハルケンは長きに渡るカキンの王族政治を根本から変えようとしており、王不要論を唱えていた。

そのため―父親である国王の顔を立てるため乗船しセレモニーには参加したものの―王位継承戦は辞退する予定であった。

しかし王位継承戦は兄弟同士の殺し合いだと分かり、それを止めようとした。

しかしながら最早中止は不可能だと悟り、腹を括ったハルケンに応えるように霊獣は新たな力を与えた。

 

■ハルケンの霊獣の能力

1:羽の刻印(36巻時点判明)

羽を相手に打ち込み、一定時間昏倒させてしまうが、ハルケンと志を同じくする者には力を与える。

志を同じくする者の左手甲にハルケンが元々説いていた「覚悟の刻印」そのものと言える羽の刻印が付き、その者を念の半覚醒状態とする。

半覚醒状態の者は自分ではそれを操作できないものの、部分的・限定的に念を使える状態となり、

羽の刻印を持つ者達が互いに意思を統一した際―電池を並列に繋いだ時の様に―莫大オーラを生み出す相互協力型(ジョイントタイプ)の集団行動形式(パーティーフォーム)の力を発揮する。

 

場面は変わり、第1王子ベンジャミンの私設兵のシカクは現在ハルケンの護衛という名の監視任務に当たっていたハズが、

ベンジャミンの無線の呼びかけによってハルケンの自室で目を覚ました。

手に刻印はないものの、ハルケンが外出しているのも関わらずハルケンの自室で昏倒していたことからハルケンの霊獣の攻撃を受けたと理解する。

 

そして、ベンジャミンからハルケンが革命を起こそうとして失敗したこと、そして一転全力で継承戦に臨むことが示唆され「ハルケンの能力を入手せよ」と指示を受けたその時だった。

ハルケンとその護衛達がただならぬオーラを携えて戻ってくると同時に、シカクに攻撃体勢を取る。

 

シカクは「遊戯王(カルドセプト)」(能力内容は明かされていない)でもって対抗しようとするが、ハルケンの新たな能力―

霊獣の力で束ねた臣下のオーラを強力無比なオーラの鎧と矢と化し、自らのオーラは弩に変え矢を放つ。

放たれた矢は敵のあらゆる防御を貫きその肉体から、臣下1名の肉体と引き換えに「意志」を奪う能力

―を前に為す術なく敗れ去る。

 

矢で貫かれたシカクの肉体には何の損傷もなく、ムクリと起き上がりと

ハルケンに敬礼と共に「御命令を」と言葉を発する。

 

ハルケンの能力は鳴動と共に強大なオーラのうねりが生じ、一定以上の念能力者であればある程度どの場所で起きたかも察知出来るようだ。

念講習会中のクラピカはこの“二度目”の現象に警戒感を強めるものの、警戒することしか出来ない現状に無力感を募らせる。

 

場面は変わり、守護霊獣を失った第8王子サレサレが、第1王子の私設兵・ウショウヒにより暗殺されてしまう。

そうして出港8日目、夜8時。晩餐会が開始された。

 

■No.383◆脱出

第1回日曜晩餐会が開催される。

第8王子サレサレが体調不良のために欠席となったと知らせが挟まれる。

(VIP達に王子達が殺し合いをしていることはもちろん秘密にしているため)

 

晩餐会ではラップバトルやダンスや演奏等の様々なパフォーマンスが用意されていたが、カチョウ・フウゲツの両王子はセンリツやキーニらの協力の下、救命艇でBW号から逃がす計画を立てており、

本気で吹けば聞く者の意識を3分間音の世界へ誘えるという、センリツが最も得意とするフルート演奏の開始と共に計画は実行された。

この音楽は館内放送で流れていたため警備の者達もセンリツの音楽で意識を飛ばしており、一方でカチョウ・フウゲツ・協会員のキーニはイヤホンでその音楽を聴かない様に対策をした上で救命艇の発射場を目指す。

 

救命艇に乗り、脱出口の出口が見え「作戦成功」を喜ぶ二人であった。

しかし、BW号の外に出ようとするの間際のkとだった。

カチョウが“嫌な感じ”がして後方を振り返ると―

謎の無数の手が二人に迫っていた。

 

センリツから扉の能力は最後の切り札で、本当危ない時だけ使うのだと事前に説明を受けていた。

そして、この迫りくる手を前に船から出ると「死ぬ」のではないかと考え、カチョウはフウゲツに扉を出して船に戻ることを急いで指示する。

 

扉を開き、中に寸でところで入り込んだフウゲツであったが(フウゲツには無数の手が視えていない様子であった)、その後ろにカチョウの姿なく、嫌な予感に駆られるのだが閉まった扉がもう1度開きカチョウがウインクをして現れた。

 

一体何があったのかと尋ねるフウゲツに、カチョウは思った以上に厄介な儀式で勝手に船から出たら罰があること、しばらくは大人しくするが作戦を立て直して再挑戦をすることを宣言する。

フウゲツは「カーちんとなら平気!!」だと、空間移動の能力の帰りの道を進む。

 

―場面は一転。

大海を彷徨う一艘(いっそう)の救命艇が映し出される。

中には果てたカチョウの遺体が転がっていた。

 

■第10王子、第11王子の守護霊獣

共に、相互協力型でフウゲツはワーム状、カチョウは無形。

 

・フウゲツの守護霊獣の能力

「秘密の扉(マジカルワーム)

幼い頃二人が遊んだアスレチック遊具「魔法の抜け道(マジックワーム)」に由来し、空間移動が可能な能力で往路(行き)をフウゲツが、復路(帰り)をカチョウが操ることが出来る。

 

・カチョウの守護霊獣の能力

「2人ゼゾン(キミガイナイ)

カチョウフウゲツの2人の内、どちらかが死ぬとその者の姿となり、もう一方が死ぬまで側で護る。

 

■No.384◆抗争

多少話が前後するが、ここでカキンとマフィアと今回の抗争の背景に触れる。

 

現実世界にもヤクザものが居る様に、カキンにも多くのマフィアが存在する様だが、

第3王子チョウライがケツモチを務める「シュウ=ウ一家」

第4王子ツェリードニヒがケツモチを務める「エイ=イ一家」

第7王子ルズールスがケツモチを務める「シャ=ア一家」

―という3大マフィアがカキンの裏社会を仕切っている。

 

今回の表向きは「暗黒大陸への移住」という世紀の偉業の1便目ということもあり

(※実際にはBW号のゴールは暗黒大陸ではない)

また20万人という乗船客達が今後築く社会を仕切る必要もあり、各組長を含め多くのマフィア達もBW号に乗船している。

 

そして各マフィアのトップの異質さが、本来ケツを拭かれるハズの王子達が、逆にマフィアのケツを拭く存在(=ケツモチ)として置かれている理由でもある。

各マフィアの現トップの3人は“二線者”という正当な後継者になれない国王の子孫(婚外子=愛人の子など)であり、産まれると同時に二枚刃で顔を割かれ、一生表舞台に姿を見せない事を条件に生存を許された特殊な存在である。

 

しかしながら、二線者達は“表舞台には立てない”ものの裏世界では十分な待遇が用意されており、今回の旅においても各王子達以上の積み荷の上限―王に次ぐ量―を許されている。

但し、その十分な待遇も“王権制度に従順である事”が絶対条件に置かれている。

 

つまり形式的にはかなりの待遇を受けてはいるものの、実質的には何も権利を有していない存在がマフィアのトップに置かれているのである。

だからこそ、何の権利も持たない二線者達が何かの問題ごとの「ケツを持つ=尻ぬぐいをする」ことなど出来るハズもなく、権利を持つ各王子達が各マフィア達の行動の責任を持つ=ケツモチの役目を負っている、という構図なのだ。

 

各組ごとの“シノギ”を持ちつつ、これまでも組と組との抗争もしばしば起こっていたものの、カキンマフィアの喧嘩(カチコミ)の流儀に則ったものであった。

 

簡単に言えば、殴り込みや銃撃(ドンパチ)をやっても良いが、事前に組長に相談し組長同士で連絡を取り合い、金銭だったり命だったり体の一部だったり、基本的には被害者側の組長が「均衡」を考えて提示するという様なもので、“二線者達に与えられたごっご遊び”の様な側面を持っているとも言えるのかもしれない。

 

但し、二線者に与えられたごっご遊びにもルールがあり、組長連絡は事後承諾になる事が多いものの、“事”から24時間以内というのが暗黙のルールであり、「組長が縄張り(シマ)から離れた場所に居た」ことが絶対の流儀であるという。

“組長が縄張り(シマ)から離れた場所に居た際に起きてしまった”から、相手側の組長への連絡が“事後”になるのであって、もし組長が事件が起きた際に縄張り(シマ)に居た場合には、それはヨソの組長に銃弾(タマ)打ち込んだも同義―手打ちなしの―どちらかが潰れるまでの戦争となる。

 

これまでカキンのマフィア達は“二線者”たる立場を弁え、適度な“ごっこ遊び”に興じていたのだろうが、最近エイ=イ一家にて“とある掟やぶり”でモレナ=プルードが組長に就いたという(詳細は明かされていない)。

 

「シャ=ア一家の組長」と「シュウ=ウ一家の組長」は当然それを良くは思ってはいなかった。

そんな時、今回の旅の船内に“流星街からもはみ出した異形の集団”である幻影旅団がいることが分かり―盗賊である彼らが船内にいる理由など聞くまでもなく―厄介な者同士、エイ=イ一家と幻影旅団はいつかは潰し合いをするだろうと思いつつ、その「いつか」を上手く調整しようとしていた。

 

そして、旅団は裏の目的が透けていたものの、それよりもまず船内で「ヒソカ」という男の捜索を優先していることを知る。

旅団よりも先にヒソカを見つけ、その情報を貸しにしようと「シャ=ア一家」も「シュウ=ウ一家」もヒソカ探しを始めるのだが、そんなときに殺人事件―被害者には組員や一般人も含まれるテロが勃発する(当然、事後連絡もなければ事件を起こした組の長がどこにいるかも不明)。

 

BW号は新大陸への旅立ちという世紀の大偉業の最中で、王位継承権を持つ王子達からすれば「20万を超える乗客らは“祝福の一人御子”となるまでの贄」にするのも王子の選択・自由なのだろうが、当然二線者達にはそのようなことは許されていない。

今回のテロを起こしたエイ=イ一家の組長・モレナ=プルードは、自分自身を含めこの世の全てがどうでもいいと考えていた。

 

“勝手に産み、疑い、怖れ忌み、傷付け、許す”

そんなバカげた自分の生を、それを強いるカキン王家を、そしてそれを許容する世界を恨んでいた。

 

モレナは事前に集めていた22名(=書類上は構成員ですらなく一般人の模様)に念能力を授けテロを勃発させた。

それは他の組からすればルール無視の戦争であり、王権制度への反逆に他ならず、「シャ=ア一家」も「シュウ=ウ一家」もモレナ殺害を画策する。

 

それが現在起きている、BW号内でのマフィア達による全面抗争である。

このNo.384ではシャ=ア一家の事務所にて、組員らが旅団員(フィンクス・ノブナガ・フェイタンの3人)にカキンマフィアの流儀を説明し、旅団員はモレナを狩った方が早いもののその所在が不明のため、モレナ組のヒットマン狩っている間にモレナを探しておく様に指示を出す。

(旅団の目的はヒソカ探しだが、マフィア抗争によって、より手間が掛かってしまうことや、モレナを狩った時にひょっとしたら未探索のエリアへの通行許可を貰えるかもしれないという狙いにシフトチェンジをした)

 

場面は一転。

第4王子ツェリードニヒの部屋での場面、それもNo.383の晩餐会より少し前に遡っている。

船内で起きた殺人事件に自らがケツモチを務める「エイ=イ一家」が関わっていること、それも組長のモレナ自身が姿を消したことで意図的な反逆であることがツェリードニヒに露見する。

 

モレナ一家の行動の責任はツェリードニヒが最終的に取らねばならず、部下たちにモレナ殺害を指示し、自身も念の修行が終わり次第動くと宣言をした。

そうして自らの私設兵であるテータの指導の下、念修行に戻るツェリードニヒであったが、その怒りに呼応するように、

本人の自覚なく新たな念獣が具現される。

(※作者ツイッターの様子から、恐らく加筆が行われていた見開きはこのページかと思われる)

 

第5王子以上の私設兵は、幼少から王子の為に捧げる訓練を受けており、士気も忠誠心も高いとは言われているものの、以前からテータはツェリードニヒの“悪のポテンシャル”を危惧しており、“決して…決して念など会得してはいけない人間”だと考えていた。

 

儀によって産まれた守護霊獣でさえも手が付けられない状態であったにも関わらず、今回怒りに呼応する様に、本人の自覚なく具現化された特質系の念獣は、正にツェリードニヒの分身の様な存在で、どの様な能力を持つかも想像がつかない(おそましいオーラを放っていたことから明らかに他を害する能力を持つ)

 

“機を伺っていたら間に合わない………!!”

そうして、テータはツェリードニヒ暗殺に向け動き出す。

 

念の基礎修行を終えたツェリードニヒに対し、テータは基礎の応用である四大業の複合の修行に入ると宣言する。

「纏」「絶」「練」「発」の内、既に「纏」と「練」に関して高いレベルで修練を続けており、その2つは「発」の威力を高めるためにこれからも鍛錬が必要ではあるものの、残された最後の行である「絶」が技巧的な鍵を握っており、「絶」を極める事は念能力を極めると同義だと説く。

(これまでそこまで着目されて来なかった様に思われる「絶」だが、「迎撃型」の発などを代表例にリスクを極大化出来ることが明かされている。また「硬」にも「絶」の技術が必要。)

 

部分的に精孔を閉じて行き、最終的には全身の精孔を閉じて1時間以上維持すること、これができれば次の段階だと説明するテータに対して、ツェリードニヒは修行が先に進むためか乗り気な一方、霊獣はテータを身近で見つめ強い警戒感を示した。

 

テータ自身が発に「絶」を用いるためなのか、過去に「絶」を非常に効果的に用いた念能力者に苦しめられたことがあるのか、テータの内心で“これは本当に念応力に必要な修行で、何も偽っていない”と宣言しつつ霊獣を見つめ返す。

 

霊獣は一旦引き、テータはこの時初めて心の底からツェリードニヒの成長を願っていた。

そして、これなら“明日にでもやれる”と決意した。

 

■No.385◆警告

修行中のツェリードニヒとテータのシーンから始まり、No.384の続きでNo.383の晩餐会の直前である。

 

具現化系能力は基本的にはAOP型の能力であり「絶」の状態となれば、具現化物を維持することは出来ない。

それは「霊獣」も、先日出現した「特質系の念獣」も例外ではない。

 

しかし「絶」の修行中、ツェリードニヒの霊獣は常にテータを警戒しており、少しでも集中を乱して一瞬でも「絶」が解ければすぐさま姿を現してしまう。

これほどまでに警戒されてしまうと、ツェリードニヒが「絶」に入って念獣へのオーラ供給が無くなって消えるのではなく、敢えてツェリードニヒのオーラ供給がある内に多少の力を蓄え、余力を残した状態で姿を消す様な可能性もあるとテータは考えた。

 

そこでテータはツェリードニヒが多少の物音や気配の変化で「絶」解く様では計画は実行できず、霊獣が余力を残して姿を消す可能性も考慮して、最低でも40分以上“完璧な絶”を維持出来たが作戦決行の時だと心に決め、わざとコップを落として割ってみたりして、

「この調子だと“絶”は長続きしませんね」

と敢えて挑発し、ツェリードニヒは予想通り反発する様に桁外れの集中力を発揮した。

 

二人の間に長い静寂の時が流れ、テータは拳銃を出しツェリードニヒに近づいて行く。

 

そんな中、突然館内放送が流れる。

ちょうど開催中の晩餐会の音楽祭より、サプライズ演奏を第1・第2層にお届けするとのことだった。

(※カチョウフウゲツの逃走出来る様にセンリツの音楽を聞かせるための計画)

 

一瞬、動揺したテータであったが、ツェリードニヒの「絶」は館内放送にも動じることなく完璧に維持されており、これ以上のチャンスはないと判断し、

“この才能を他人の為に使える人格者であれば…せめて一撃で楽にして差し上げます”

とツェリードニヒの額目掛けて銃を放った。

 

―ハズだった。

突然目の前に美しい花々やその近くを舞う蝶、川のせせらぎに荘厳な山々の中に包まれていた。

そして気が付くと目の前にあったツェリードニヒの死体はなく、部屋の外の警護兵がテータの銃声に反応して入って来る。

 

すると、殺したハズのツェリードニヒが自らの後方から

「修行の一環だ。問題ない。」

とテータを拘束しようとする警護兵達を止めた。

 

テータは何が起きているか分からなかった。

しかし、唸り声と共にツェリードニヒの霊獣が近づいて来る。

そうして自らの顔の前まで来て、

“次ニ王子ノ質問ニ偽リデ答エレバ オ前ハ人間デナクナル”

と警告を発し、テータは気絶する。

 

目が覚めると傍らには同じ私設兵であるサルコフ(同様にツェリードニヒを危険視している)が傍らに居た。

そしてテータの左頬(No.365/35巻にて霊獣から付けられた傷口)に呪瘡の様な傷(?)が広がっていた。

サルコフは、最初の嘘で傷のマーキングをして、次に言葉と記(しるし)で警告し…それに反すれば死より残酷な罰が待っているはずだと述べ、このままテータが動けば王子が有利になるだけだと説く。

 

―必ず自分が何とかすると。

 

■No.386◆仮説

場面はツェリードニヒの私室(1004号室)。

テータはサルコフの力も借りて、自らがツェリードニヒを“殺害した現場”を調べて貰った結果、現場には血痕すらなく、ルミノール反応も出ないため「テータが銃を撃ったのは事実であるが、ツェリードニヒは撃っていない」という結論がでた。

 

テータは困惑していた。

鮮明に残るツェリードニヒの死体の映像。

血や脳漿が散乱し広がっていく鮮血、倒れた王子に、まだ動ている口と指、喉からもれる音や嫌な臭い…

しかし、自らが「見た」と思っていたものは実際にはなかったのだ。

どこまでが現実で、どこからが幻想なのかが判断出来ずに居た。

 

場面は変わり、第2層の司法局で取り調べを受けるセンリツ。

カチョウフウゲツ両王子の逃走劇は、“自殺したキーニ協会員がカチョウフウゲツ両王子を事故で死んだ妻と娘に姿を重ね、無理矢理救命艇に乗せて逃がそうとしたものの、両王子は何とか乗らずに済んだ”という如何にも怪しいシナリオだが、それ以外を裏付ける様な材料がなく、キーニ協会員による単独犯行という結論に落ち着きそうだという。

 

しかしその一方で、センリツの音楽を聴いた者達は全員、音の世界に誘われ“何も出来なかった”こともあり、何人かの王子がセンリツの演奏に“感動”して、自分達の部屋に招きたがっているという。

司法局の取り調べは“危険な王子達から守る為の拘束”であり、カチョウフウゲツ両王子が実は“自発的に”逃走しようとしていたと考えてはいるものの、その証拠も見つかっていないため証明は難しく取り調べは長時間に及ぶだろうと説明をを受ける。

センリツはこの時間を使い、何とかカチョウフウゲツを助ける次の手を考えなくてはならなかった。

(※「カチョウの霊獣」が「カチョウに成り代わった」ことを少なくともフウゲツやセンリツはまだ知らない。しかしその一方で、いくらカチョウの“死によって強まった念”だとしても、フウゲツが死ぬその時まで念獣を維持し続けるには相当なエネルギーが必要であり、何か「生前のカチョウ」とは異なる点や、エネルギーを温存するため、あるいは“フウゲツの側で護る”という制約のために異常事態が起きている可能性がある)

 

また場面が転換して今度はハルケンの私室(1009号室)にて。

第一王子ベンジャミンの私設兵・シカクを撃った弓矢の力の検証をしていた。

シカクを撃った直後から昏倒が続く、ハルケンの私設兵・スミドリの肉体を調べると脈や脳波に異常はなく、数値から「睡眠」と判断出来るという。

一方で、弓矢で撃ったシカクは見た目こそシカクそのものだが、体の持ち主の自身の認識はスミドリであるため、スミドリの魂がシカクの肉体に憑依している様な状態だと推測された。

 

ではシカクの意識―魂はどこに行ったのか。

可能性は4つ。

1:死=消滅したか、

2:スミドリ肉体が入れ換わっているだけなのか

3:シカクの肉体で共存しているのか

4:他のどこか(誰か)へ行っているのか

 

ハルケン陣営には念能力者がいないため、否定する材料も肯定する材料もない。

1と4は検証が困難であるが、2はスミドリの脳波に変化が生じれば「誰か」がスミドリの肉体にいる事は確認出来るのではないかと、そしてハルケンはナスビーと話し運命を受け入れ覚悟決め、その直後に覚醒したこの能力は継承戦を勝ち残る為の能力だと確信している―とハルケンは言う。

 

その上でハルケンは自身の能力の内容に関して仮説を立て、それを私設兵達に説明をする。

(※再開後含め、未だその内容は読者側には明かされていない)

そして、能力の確認は絶対に必要な工程であるため、シカクの体に憑依したスミドリにある指令を下した。

 

また場面は転換し、今度は1007号室―つまり第7王子ルズールスの部屋に移る。

協会員であるバショウはルズールスに“例のオーラの鳴動”が隣りのハルケンの部屋から始まったことを告げ、その直後来客を知らせるチャイムが鳴る。

インターホン越しに相手を確認すると相手は第1王子ベンジャミンの私設兵シカクであり、オーラの鳴動の件もあり、インターホン越しに用件を聞く様に指示するバショウ。

 

すると敬礼の後、声高に「ベンジャミン王子殿!万歳!!!」と叫びながら自らの頭を撃ち抜き自害する。

その直後、隣りの部屋からオーラの鳴動が止んでいることに気づくバショウであるが、何が何だか分からずにいた。

 

無線の状況からシカクが自死したことを知る第1王子ベンジャミンと私設兵隊長のバルサミルコ。

シカクが弓矢に打たれる前後の状況を知っていることもあり、全陣営の中で最もハルケンの能力の情報を掴んでいた。

ルズールスの部屋で居た私設兵・カンジトルを呼び戻し、事件までの経緯を思い出させ、一躍危険人物になったハルケンの能力を探ることとなる。

 

再び場面が転換しハルケンサイドへ。

睡眠状態だったスミドリは椅子に拘束された状態で目を覚ます。

そしてハルケンはスミドリに「所属と認識番号」を尋ねる。

 

再々度、場面が展開し、今度は念講習会中のクラピカ達。

バショウ同様、異常なオーラの鳴動を感じ警戒するクラピカとビル。

鳴動が発生した場所は、偶数側の王子達の部屋ではなく、恐らく「9・7・5」付近だと指摘するビル。

念未収得である第3王子チョウライの私設兵サカタが「チョウライ王子は除外できるのか?」と心配するが、「可能性はゼロではないが第3王子の守護霊獣のオーラの感じではない」とクラピカは答える。

全く感じることの出来ないサカタは、何がどう危険なのかもわからないことクラピカに尋ねると、

膨大なエネルギーが爆ぜる様に一瞬で消えるのは「放出系の能力」使用時に多く起きる現象であり、放出系の攻撃ならば物理的な障壁をすり抜ける事も難しくはないこと。しかしそれ以上に誰を、どのような能力で攻撃してるのか、「分からない」という事が最も危険なのだと説明した。

 

鳴動に対する不安や警戒の一方で、サカタは同じ修行が続いていることで参会者達に「本当にこれで念が使えるのか?」と疑念が沸き始めていることを指摘した。

クラピカもそれは認識しており、次の段階に進めることにした。

参加者達の前でクラピカは水見式を行い(水の色が変わり葉っぱが回転=コンタクトで隠しているが緋の眼状態での水見式)、自らが特質系に属する念能力者であり、検証するに十分なオーラを発せられない者には使えない方法だが出来そうなメンバーが何人が現れ始めており、

“一番覚えがいい”というラジオラスを指名する。

そして、念系統は本来他人には決して終えてはいけないトップシークレットで、自身のようにどの系統か判別のつかない特質系ならば影響は少ないが、敵に自らの念系統を知られてしまうのは先手を決めるジャンケンで出す手がバレているのと同じ位不利だあると参加者達に述べた。

(この描写・文言を下に特質系能力者の習得度は5パターンあると判断しているため、37巻で修正が入らないかどうかドキマギしている)

 

そこでその判別は別の部屋で行うことを宣言するが、密室で成されいることが本当に判別なのかは非能力者である参加者には判断出来ない上、判別表を渡して各自でやればいいのではないか等と参加者達からは不満が噴出する。

 

しかし、今回はサポートが必要な方法で行うため立ち合いは必要であり、自身が特質系だと明かしたことは他系統との比較の話に過ぎず相応のリスクを負っているため、参加者達の念系統を知る報酬を得るのは当然の権利である。

 また今回の念講習会は武力両面で下位の王子護衛官の戦力を底上げし膠着状態を長引かせる為であり、争いを全く望んでいない自分達から危害を加えることはナンセンスな話であると答え、この条件で納得出来ないのであれば、講習会参加をここで辞めて貰っても構わないとクラピカは“ぶっちゃけ”ながらも思惑を伝えた。

 

場面が転換し、第4王子ツェリードニヒに自室にて。

テータに代わり、ツェリードニヒの修行に付き合い始めたサルコフは想像の遥か上の速度で念を習得していることを知り、出来る限り時間を稼ぎたいこともありひどく困惑していた。

 

そんな中、ツェリードニヒは自らの心境の変化に驚かされていると言う。

1週間前まで、

“この世で一番嫌いなのは嘘つく女”だと考えていた自分が、

“裏表のある女”に魅力を感じ始めたのだという。

 

■No.387◆再現

場面はNo.383の晩餐会前に遡り、ツェリードニヒ目線であの時起こっていたことが描かれる。

 

「絶」の修行を開始してばかりだが、既に「絶」のコツは掴んでいたツェリードニヒ。

体の先端から徐々に精孔を閉じて行かないとムラ出来るため、全身をいっぺんに閉じるのは確かにレベルが高いと、目を閉じて「絶」に集中する。

 

すると、目を閉じているにも関わらず視界にノイズが走り、テータが自分に声を掛けて集中力を乱し「絶」の妨害をしようとする様子が映し出される。

“夢”と思いつつも戸惑い集中力を乱し「絶」が解けてしまったところで目を開けると、テータは先ほどの映像通りの言葉を繰り出し、別の話をしても全く会話が噛み合わず、「テータの言葉」がさきほど見た“夢の様子そのまま”であることに気づく。

 

ツェリードニヒは持ち前の頭の良さから、これが念能力であることに気づき、「絶」が起点になっている「予知夢」だと理解する。

一方で、予知夢を見ている間は体の自由が効かず、能力発動中無防備だとしたらリスクが高く、予知夢を見ている間がリアルタイム進行なら、無防備で10秒後の未来を10秒掛けて視る能力だということになる。

ツェリードニヒは自分の能力ならば、そんなことはあり得ず、予知夢は刹那、一瞬よりも短い間に見ているハズだと改めて能力を試す。

 

検証を経て、自らの能力の10秒の予知夢はリアルタイムの10秒ではなく「刹那の10秒」で、刹那の間に10秒を予知し、その刹那10秒を過ぎると現実世界よりも10秒早い世界を予知夢(ビジョン)で“見続ける”ことも出来ると理解する。

 

さらに検証を重ね、目を閉じて「絶」をすると、刹那の一瞬で10秒間の未来を予知夢(ビジョン)として見る事ができ、予知夢(ビジョン)で見た10秒間は自分以外は予知夢(ビジョン)通りの行動しか出来ず、自身だけがその10秒間の行動を変えられる能力だと確信する。

 

「絶」状態でも目を開けてしまうと、10秒後には10秒のズレが一旦リセットされてしまうが、「絶」さえ続けば再度目を閉じれば連続発動可能なことも分かったため、“どこまで続けられるか”を試していた。

そんな時、例の事件が起きようとしていた。

 

予知夢(ビジョン)の中でテータは銃を出し、ひっそりと自分に近づき構え自らに銃を放ったのだ。

驚いて目を開けると目の前でテータは自分に向けて銃を構えていた。

しかし、目を開けてからの10秒間はツェリードニヒが異なる行動をしたとしても相手は予知夢(ビジョン)通りの行動し、予知夢(ビジョン)通りの認識のままなため、思わずテータの銃口から退き尻もちをついたツェリードニヒだが、テータは自分が居た場所を見つめ銃を構え続けていた。

 

そして、テータが銃の引き金を引いた次の瞬間―、

ツェリードニヒとテータを不思議な世界が包み込む。

 

しばらくして不思議な世界が消えると、テータは自身の遺体が無くなったことに驚き何が起こったか分からずに居たが、ツェリードニヒは半分は自分の能力だがもう半分は「自分とは別の誰かが念能力で何かした」事に気づき、これまで知らなかった念の世界が“楽し過ぎる”と興奮を覚える。

 

そして、銃声を聞きつけた部屋の外に居た護衛がテータを拘束しようとしたため、

「修行の一環だ。問題ない。」

と部下達に指示をした。

 

驚くテータの様子を楽しみつつも、テータが自分を殺そうとした理由を後で確認しようとすることし、最優先でやるべきは自身の能力の把握と、さらなる能力の向上であると考えたツェリードニヒ。

「絶」になろうと考えてから実際に「絶」になるまでの時間、そして、その状態を維持する技術。

 

その2つを極めれば「絶」を自在に操れるようになれば―、

自身が継承戦を制覇すると確信をする。

 

■No.388◆思案

場面はクラピカの念講習会で、ラジオラスの念系統を調べるところから始まる。

別室にクラピカとビル、そしてラジオラスが入っていくのを見守る他の念講習会の参加者達。

 

本当にこれでいいのか。

確かに念習得が最優先であるものの、もしこの状況がクラピカ達の狙いだったとすれば、まんまと術中にはまることになる。

 

しかし、そんな心配に対し第1王子ベンジャミンの私設兵であるヒュリコフは、

「操作されているかどうかは注意深く観察すれば分かり、もしその場合にはビルとクラピカは即拘束され、自分達の防衛にも関わる事のため信用してもらおう」

と講習会の継続を要請する。

(クラピカとビルの能力を把握するため、ヒュリコフとしてはクラピカ達を泳がせたい)

 

そうして、ラジオラスが出てきたが、

明らかにオーラの流出量が増えており、基礎修行を経た念能力者にしか思えず、クラピカらに操作されている様子もなかった。

 

そして、次の覚醒者には第5王子ツベッパの私設兵隊長であるマオールが選ばれた。

部屋に入ると、ビルの能力をクラピカの能力で貸し、その副次効果が念に目覚めさせ様としいる。そして先程は参加者の念系統を知ることはこちら側の権利だと言ったが、今回のやり方はビルのオーラも貸して行うため参加者の念系統は把握できない (後で個人的に水見式を行うことで誰にも知られずに自系統が判別可能)等と、クラピカが丁寧にそして誠実に説明を行っている様子が描かれた。

 

そうしてラジオラスに続きマオールが念に覚醒し、ヒュリコフはマオールの様子を見て「ほぼ間違いなく操られているわけではない」と判断を下す。

その後、ユウリとサトビが念に覚醒した様だが、特段ヒュリコフらのコメントはなく連続殺人事件の犯人についても語られず仕舞いとなった。

 

ビルはクラピカの戦略は現状ベストであることには間違いないものの、“力”は人を容易に変えてしまう。

潮目が変わり、一度継承戦やむ無しの流れに傾いた時、自分達は自ら与えた“力”に押しつぶされるかもしれないことに不安を募らせる。

 

無事に約束通りに念覚醒者が続出したことで、第3王子チョウライのところから来ている私設兵サカタ・ハシトウは完全にではないもののクラピカを信頼する方向に傾き始め、ハシトウは講習会には参加していないが自分が先に水見式を受けたい、早めにチョウライ私設兵の誰かも覚醒しておいた方がいいと判断したことを伝え、クラピカは了承した。

 

―場面が代わり、第5王子ツベッパの私室にて。

念に覚醒した私設兵隊長マオールは、クラピカに関して非常に好意的な報告をし、信頼しているという姿勢を貫けば協定の件も相乗効果で進展するとも進言する。

 

サレサレの暗殺を終え、今度はツベッパの暗殺をするためにツベッパ付きとなった第1王子ベンジャミンの私設兵リハンであったが、あけすけな作戦会議とは裏腹に全く霊獣が姿を見せず、何も情報が得られない現状に不満を抱き、ハンタ史上最長とも思われる激しい葛藤を心の中で繰り広げる。

 

ツベッパはサレサレが音楽会を体調不良で休んだことを性格上あり得ないと考えていた。

そして第1王子ベンジャミンの私設兵の配置が変わったことから、サレサレは暗殺され次の標的は自分だということに何とか対策を立てようとしていた。

しかし、自分の立ち位置では少しでも選択を誤ればあらぬ嫌疑を掛けられたりとリスクが高い。

念に目覚めたばかりのマオールではまだ念能力に対する防衛は望めない。

どうしても右腕(パートナー)としてクラピカが必要だと考える―。

 

出港から10日目 午前11時30半

例のオーラの鳴動がまた始まったのだった。

 

■No.389◆呪詛

場面は第1王子ベンジャミンサイド。時期はシカクが自死しNo.386の直後ほど。

この時点では出港から9日目 午前10時であった。

 

事件の際、ルズールスの部屋の中に居たベンジャミンの私設兵カンジドルが呼び戻され、当時の状況を聴取されていた。

カンジドルは例の放出系の特徴を有したオーラの鳴動を単純に破壊力として換算すると「音速を超える直径5mの火球」クラスだと推定し、シカクはベンジャミンに向けられた咆口を下ろさせる代わりに自殺を強要されたのではないかと考えたを述べた。

 

しかしバルサミルコは威力の見立てには概ね同意したものの「交換条件による自殺強要」には各種疑念があるため賛同出来ないことを伝え、「何故シカクは自死したのか」とは別に「何故1007号室の前だったのか」にも何か理由があるハズで、当時の状況を可能な限り細かく思い出しこれからの1007号室の動向を注意深く観察することを命じた。

 

そして、出港から10日目 午前11時30分に場面は転換する。

例の鳴動に警戒を強めるベンジャミンとバルミルコ。

 

ベンジャミンは攻防相俟った「表裏一体(タックルシールド)」という能力を持つ私設兵のビクトをハルケンのところに配置しており、制圧するまでは行かずとも現状を維持し敵の動きを抑制することは十分可能と考えていたのだが、ビクトから緊急の無線が入る(奥歯を2度噛むと発信できる模様)

 

ビクトは戦闘中の様だったが、程なくしてビクトの叫び声と共に鳴動が終わった。

つまりハルケンの攻撃は来るとわかっていても守る事も避ける事も攻撃する事もできないもので、ベンジャミンの能力からシカクの能力は既に自身に継承されたにも関わらず、今撃たれたビクトの能力が継承されていないことからビクトはまだ死んでおらず、単なる放出系の射撃ではないと理解する。

 

以前にシカクから報告のあった、並列電池の要領で莫大なオーラを生み出すことの出来る霊獣の力を基礎に一射ごとに命を削る程の覚悟を込めた能力だと判断し、バルサミルコは「敵の能力が強力ならば使わせないことが一番」だとハルケンと私設兵達を分断させるべく、シカク・ビクトと続く異変をハルケン側に謀殺の疑いで訴追することとした。

 

司法局の捜査員達がハルケンを拘束したものの、カミーラの時と同様、証拠不十分で釈放されてしまう公算が大きいという。

しかし、私設兵が近くにいない今、弓は作れないであろう今は千載一遇の好機で、この機会に確実に仕留めるとバルサミルコは宣言する。

 

場面は転換し、1006号室の第6王子タイソンの自室。

当初、警護対象であるタイソンとその経典を舐めていたジュリアーノだったが、少しずつ異変が起き始めていた。

 

また場面は転換し、入口でシカクが自死した1007号室。

バルサミルコの指令を受け、情報収集をするベンジャミン私設兵カンジドル。

様々な仮説も立てるがそれを裏付ける証拠も見つからず迷っていたところに、ハンター協会員のバショウはルズールスの私設兵2人が怪しいと大嘘をかます。

シカクの自死は自作自演で死後強まる念を使う「死後の念」使いではないかと疑っていたためである。

 

さらに場面は変わり、ベンジャミンへの単騎特攻をやらかしたカミーラは自室ではなく、ベリーVIPエリアにある監視居住区にいた。

そして、実はそのカミーラこそがバショウが警戒していた「死後の念」使い達を抱えていたのだ(さらには逆にカミーラが呪われた時のための除念師すら用意していた)

 

◆呪憑型の念能力

カミーラの私設兵達が持つ死後、対象を呪い殺す能力。

標的(各王子)の写真・衣類、体の一部等を携帯し、出来るだけ長い期間、出来るだけ標的に近い距離で想う程呪力が強くなる。

術者の死で能力が発動し、理想は標的の目前で自死することである。

 

・能力形成の背景

古代国家であるカキンには、過去「死後伴侶」という特異な殉葬が存在した。

死後伴侶とは国王になれなかった王子が死んだ後に怨霊となって国王や国にたたらないように黄泉の王子を監視する為、共に埋葬された異性を指し、“王子の伴侶”という名誉とは裏腹に不可持民という生涯不変の身分制度の更に下層の者から強制的に選定された。

現在では死後伴侶は廃れたが、不可持民の地位は向上されず、公職ましてや上級公務員である軍人になることは絶対に不可能であった。

しかし第2王子カミーラはその不可持民全員に対し、私設兵に就く機会を与え、私有地を設けた特区に於いて軍兵と同等の地位と権利を与えた。

これにより、被差別民からのカミーラへの圧倒的な支持と共に私設兵の中から自然発生的に死後伴侶復活の声が上がり、念能力と合体する事で、より強力な暗殺呪詛へと形態を変えたのだった。

 

またまた場面が変わり、今度は第3王子チョウライの自室。

念講習会に参加していたチョウライの私設兵テンフトリが講習会終了を報告。

(※念講習会は2日目に始まり2週間の日程だったため、この時点で出港15日目)

 

無事念を習得してきた部下に対し、

チョウライは霊獣が創った効果不明のコインを褒美として渡す。

 

テンフトリが受け取り人の第一号であるという言葉に、実は最初の1枚目隠れて拾っていたベンジャミン私設兵コベントパは内心で笑う。

そして、ふと手元のコインを見た時拾った際には「1」だったらコインの数字が「10」に増えていることが気が付いたのだ。

 

■No.390◆衝突①

第3王子チョウライの自室でNo.389の続きの場面。

自分が拾ったコインの数字が増えていることを受け、今回テンフトリが受け取ったコインを見せて貰うが、

自身が“拾った時と同じもの”で、同様の変化がテンフトリのコインにも起きるのか様子を見る事とした。

(※この時のコインの数字が「10」になっているため、37巻で修正の可能性あり)

 

第3王子チョウライは、霊獣が効果不明のコインを毎日1枚創出することに対して、最終的には全国民にあます事なく影響をもたらす能力だと予感はあるものの、現在進行中の継承戦においては役に立つ気配さえ感じられないことを嘆いた。

一方で、王になる前から“なった後の心配している”自身の性格を嫌と言う程に反映していることから、霊獣の能力を「王になった後に最大限発揮されるに違いない」と予測した。

生き残りさえすれば盤石の王になれると理解し、継承戦は自らの裁量で勝ち残って見せる、光と闇を使いこなせてこその真の王で、継承戦は自らの闇の真価を見せる場所だと覚悟を決めた。

 

そうして、チョウライは自らがケツモチを務める

シュウ=ウ一家組長オニオール=ロンポウの部屋を訪ねた。

 

・チョウライは継承戦が始まり、もう「3人」の兄弟が死んだことを報告。

→この「3人」というセリフは修正されている可能性がある

モモゼの死は半ば公になっているため問題ない。

サレサレの死は必ずしも公になっていないものの下位王妃に監視兵を付けられるためチョウライは把握してる可能性あり(第3王妃系はチョウライのみのため、“上”の王子から情報統制される様なことがない)

そして、問題の3人目が誰のことを言っているのかは不明である。

もしカチョウ(カチョウの霊獣が成り代わっている)のことを言っているならば、カチョウフウゲツ両王子に付けている下位王妃への監視兵からの報告で、明らかにカチョウの様子がおかしくなっているという報告が挙がっており、実は死んでいると判断をしたという可能性もある。

また一方で、この時は“出港15日目”なのである。

ビクトが撃たれハルケンが拘束されたと思われる日から5日もの空白があるため、この3人目はカチョウ以外の王子が、半ば公に死亡している可能性もあり現時点では何とも言えない(場面・時系列が前後しているだけ)。

 

・また、チョウライは念能力について調べて欲しいと頼む

→オニオール組長は“二線者”故に継承戦についても念能力についても知らないと伝える一方、若い衆の中には妙な力を使えるという奴がいるため確認すると約束。

一方で、マフィアの抗争が起きているため時間が掛かる可能性を示唆。

帰り際にチョウライはオニオールに対し、“頼んだぞ…父さん!”と信頼を寄せていた。

※オニオールは現国王ナスビーの異母兄弟とされており、もし言葉通りにチョウライがオニオールの実子であるならばその時点で今回の王位継承戦のルールは崩れていることになってしまうため、チョウライはオニオールに実子当然の様に育てられナスビーよりも父性を感じている、という意味の描写なのかと思われるが詳細は不明。


オニオールは、“気長に待っててくれ”と口にはしていたものの、チョウライが部屋から出ようとする段階で若頭のヒンリギに電話を掛け抗争の状況を確認しつつも、

早期に抗争を終わらせるために“ヒソカ捜索”と“モレナ殺害”を指示した。

そうしてシュウ=ウ一家の若頭・ヒンリギは構成員のリンチとザクロの下に向かい、「抗争開始とエイ=イ組を潰す」ことを宣言した。

 

自分達の縄張り(シマ)である4層から、モレナ達のシマである3層に上がると、さっそくヒンリギは不審人物を発見。

バーガー店でヒンリギらを見て動いた男女の内、男の方をリンチとザクロが声を掛けると、

後方から現れた別の男がザクロの首頸動脈付近を切りつけ、

それに気を取られたリンチも腹を蹴られて飛ばされてしまう。

一方で、バーガー屋に居てこちらを見た後、その場を離れてた女を追っていたヒンリギであったが、兵士達が構える通路を素通りしたことから「(書類上は)マフィアの構成員リストにも入っていない一般人」で、自分と違い特段兵士達の静止を受けることもなく一般エリアに出入り可能であることを知る。

 

先程やられた様に見えたリンチとザクロであったが、

ザクロは自らの血液を操る力を持つが、自分で自分を切ることに勇気がいるため、わざと切られた様で、

リンチも相手の力量を測るためだった様だ。

 

・ザクロ=カスタード(操作系)

能力「血いさな世界(ブラッディメアリー)」

自分の血液を自在に操る

“点滴”は実用と制約を兼ねている

→ヒンリギに抗争開始と知られた際には「“輸血パック”がもっと要るなァ」と呟いており、血を操る能力で“点滴”することが実用と制約を兼ねていることには疑問もあるため、恐らく37巻で修正が入るかと思われる。

 

・リンチ=フルボッコ(放出系)

能力「体は全部知っている(ボディアンドソウル)」

標的に質問してから殴る事で標的の心の声を聞く事が出来る。

※その声は周りの人間には聞こえず、相手が気を失っていると聞くことが出来ない。

 

ザクロとリンチは相手の男二人を簡単にのしてしまうが、ヒンリギ達が襲われたとは言え相手は一般人。

兵士達も完全に無視することは出来ず、

“過剰防衛だが今回は見逃してやる。その代わり3層にはもうくるな”

と釘を刺されてしまう。

ヒンリギは謝罪の気持ちとして金を渡し、

“銃を使わせる様な事はしない。もう来ないよ。約束する”

とあっさり引いてしまう。

 

金を得た兵士達は「もうけたな。抗争万々歳だぜ。」などと話していたが、自分達の持っていた銃の先が蛇に変わっていることに気づき、次の瞬間には蛇の口から銃弾が飛び出して来て死亡する。

ヒンリギは“約束した連中が死んじまったようだ”と、一度は4層に戻ろうとしたが踵を返し、逃げた女を追う。

(※モレナの配下の男二人をその後どうしたか不明)

 

―というのが大まかな37巻情報です。


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