ELDEN RING 感想のその2
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■もくじ
┣◆感想1 →前記事
┃┣ローデリカ
┃┣セレン
┃┣セルブス
┃┣ラニ
┃┣ミリセントとゴーリー
┃┗神について
┗◆感想2 →本記事
┣マリカとラダゴンについて
┣火の巨人について
┗メリナについて
※以下「感想1」の続きです。
■マリカとラダゴンについて
これも1周目では良く分からなかったこと。
亀爺からラダゴンには何らかの秘密があることは聞いていたがローデイルにて、
“ラダゴンとはマリカである”
と、示された。
ダクソ1の地下墓地で「暗月の司祭の指輪」を入手できるところの壊せる壁の真下に公式メッセージがあって当時激萎えしたが、今回も石像前で―公式メッセージで隠すことなく―“秘密を明かす方法”をネタバレされ激萎えしたものだが、今作はちょっと様子が違ったかもしれない。
これをきっかけに新たな謎が生まれたのだ。ラダゴンが実はマリカだったとすると―
エルデンリングを壊そうとしたかと思えば、それを修復しようとしたり、エルデリングを壊した後に誰かがエルデの王になれない様に刺で拒絶したり、わざわざレナラと婚姻して、その後自分自身と結婚したりと
―マリカは何をしたかったのかと。
1周目クリア後、旅の記憶(各所でのスクショや動画やアイテム情報)を見返し大まかな見当はつけたものの、まだ見ていないイベントやアイテムがあったので2周目は情報収集に中心に行ってみた。
まずそもそもマリカとは、かつて狭間の外からやってきた稀人であり、
マリケスから死のルーンの一部を盗んだ(マリケスに運命の死の封印たるを望み、後にそれを裏切った)ことから、
「陰謀の夜」の真の黒幕であり、ゴッドウィンを殺害した実行犯である黒き刃の刺客たちに“近しい”存在であるという。
そしてロジェールによれば、黒き刃の刺客たちは永遠の都の末裔と言われており、
恐らく“神殺し”の末裔かと思われる。
そして、ローデイルの「小黄金樹教会」に残されたマリカの言霊―
“黄金律の探究を、ここに宣言する”
“あるべき正しさを知ることが、我らの信仰を、祝福を強くする”
“幸せな幼き日々、盲信の時代は終わる”
“同志よ、何の躊躇が必要だろうか!”
(ジェスチャー「外なる律」を入手)
―から、マリカの変化が見て取れる。
当初は自らの律を信じていたのだろう。
何がきっかけとなったかは不明であるものの、それは幼さ故の盲信に過ぎず―排斥した律あるいはまだ見ぬ律―「外なる律」を求め彼女なりに新たな黄金律を探究しようとしたのかと思われる。
しかし、そんなマリカに大きな異変が生じ始めたのかと思われる。
ゴッドウィンの友たるフォルサクスの姉、ランサクスは人の姿に化け、古竜信仰の司祭として騎士たちと交わったというが、「擬態のヴェール」が「マリカの戯れ」と呼ばれる様に、マリカ自身も変化の術(魔術?祈祷?)を自由自在に扱っていたのかと思われる。
マリカのラダゴンへの変化が、幻術的な見た目だけの変化なのか、上述のミリセントの分け身の様なものなのかは明らかになっていないが、
“ラダゴンは、自らの赤髪に絶望した”
ということから、恐らく後者に近しい変化なのかと思われる。
つまり、黄金律に変化を求め本体は二本指に従順なフリをしつつも外なる律を探究させようと、あるいはそれを為しうる新たな王を探すために、自らの分け身たるラダゴンを生み出したのだろうが、その髪が赤く染まっていたことで初めて異変に気づき絶望した―ということなのではなかろうか。
マリカを磔にしていた刺が赤かった様に、古竜の雷や、マリケスの黒き剣、原初の黄金がより生命に近く赤味を帯びていた様に、神(大いなる意志)に近しいものは赤いのではなかろうか。
つまり見た目だけ変化ではなく、分け身の様な存在であるが故、自らの内に神に近しい存在が巣食っていることに気付き、既に首輪が付けられていることに絶望した、という意味合いだったのではないかと思われた。
ここで1つ疑問が沸いたのだが―
マリカ(金髪)とゴッドフレイ(白髪)の子は、ゴッドウィン(金髪:OPから)、モーゴット(白髪?)、モーグ(不明)や、その子孫あたるゴドリック(白髪)。
ラダゴン(赤髪)とレナラ(黒髪?青髪?)の子は、ラダーン(赤髪)、ライカード(赤髪?)、ラニ(不明)。
そして、マリカ(金髪)とラダゴン(赤髪)の子は、ミケラ(金髪?)、マレニア(赤髪)であるが
―「マリカとラダゴン」は如何に子を成したのか。
本体とは別に存在しうる分け身ならば通常の人間と同じ様に子を成すことも可能だろうが、ひょっとすると神の子の成し方は別の方法もあるのかもしれないと思わせるものがある。
ラダゴンがレナラに贈り、産まれなかったというデミゴッドの大ルーンが宿っていた「琥珀のタマゴ」である。
というのは、
“神々の運命を司る”とされる琥珀の星光があった場所に、何故か右手のない女性と幼い子どもの石像があるのだ。
この石像はミケラの聖樹にもあることからミケラとマレニアの像かと思われ、新たな黄金律を探究しようとしたが自らの体が神に巣食われ、それでも未来へ希望を残すためレナラに琥珀のタマゴを送り、自身も琥珀のタマゴ(琥珀の星光?)を用いてミケラとマレニアを産み出したのではなかろうか。
しかし、レナラのタマゴは孵らぬどころかレナラの心は壊れ、
神の子供であるハズのミケラとマレニアが脆弱で永遠の幼さと腐敗という宿痾を背負って産まれたのは、ラダゴン(体の内に巣食う神)から何らかの妨害があったのではないかと私は考える。
―マリカは槌でエルデンリングを砕こうとし、ラダゴンは同じ槌でそれを修復しようとしたというが、
オープニングの破砕しようとしするマリカの姿と、修復しようとしている(?)ラダゴンの姿は、右方の影でぴったりを重ねることが出来ることから、最期の力を振り絞って砕こうとしてマリカを、内から飛び出て来たラダゴンに寸でところで止められたのではなかろうか(完全に振り下ろす直前で止められたため、砕き切れなかった?)。
そして、その後ラダゴンは修復しようしたのだろうが修復することは出来ず、これ以上破壊されぬ様に石舞台を拒絶の刺で閉じたのではないだろうか。
また、鍛冶師事は古くは巨人の技であったというが、
ラダゴンは「黄金律の大剣」を手ずから鍛え上げている。
マリカの内に巣食っている神は本当に黄金律なのか。
ひょっとすると巨人戦争の折りに、火の巨人の内に隠れている悪神に呪いを受けて冒された黄金律なのか。
それとも黄金律の2つの力の1つである「回帰」が、一度は排除した「律」に戻ろうとしているのだろうか。
■火の巨人について
元々この火の巨人については書く予定はなかったんですが、1つ前の項目でちょこっと触れて気になってしまった。
「釜の火が不滅」と分かり山嶺に人が立ち入らぬようにしたものの、何らかの方法で禁域に入り“滅びの火”を使い良からぬことをされては困るから、巨人戦争を生き残った小さき巨人に永遠に火を守る様にさせた―様だ。
そして、それは“刻印の呪い”による結果だと言うが、どの様な意味なのだろうか。
ラダゴンの刻印は、
「金糸」で、カーリアの魔術教授に秘匿を強いたり、レアルカリアの門やルーサットへの場所に施されていたことから“封印”の類の効果を持つのかと思われる。
そして、これはラダゴンというよりは内に巣食う神―エルデのルーンである。
さて、それではマリカの刻印とは何か。
これも同じくエルデのルーンと言われおり、形状から“磔にされたマリカ”かと思われる。
しかし、マリカが磔にされたのは巨人戦争のずっと後のことであり、巨人戦争の終結時に刻印したとされるルーンとは異なる様に思われた。
すると、マリカの刻印とは神人であるマリカが二本指から与えられた使命=「律」―即ち黄金律なのではなかろうか。
黄金律は「因果」と「回帰」という二つの力で説明できるという。
「因果」とは「万物を関係性の連環となす、“意味間”の引力」であり、「回帰」とは「万物が不易に収斂しようとする、“意味”の引力」だといい、それは言うなれば「永遠」である。
永遠の火守りを任じられた者=不死の者を、結果的に主人公が特殊なルーンの力を用いずに殺せたが、その前に火の巨人は折れた自身の左脚を引きちぎっている。
すると、マリカが打った“刻印はその左脚にあり”、そのルーンを左脚ごと自分の体から取り除いたことで火の巨人の永遠性も取り除かれ、主人公は火の巨人を殺し得たのかもしれない。
もう少し補足すると、恐らく「“滅びの火”の不滅性」と「火の巨人」を因果で結び、かつその体の中に隠れている悪神を「体の内側」に「回帰」させていたから、左脚をもぎ取った事により内側から悪神が現れ、不死性も同時に失ったのではなかろうか。
(黄金律の永遠性は、恐らく「黄金樹」と因果で結び「狭間の地」の中で回帰させているのかと思われる)
―神は、見出した者に生涯の使命を与え、強き使命は逃れ得ぬ呪いのようにその者を蝕むという。
マリカは「神」である。しかし、それは“内に神が宿っている”からであり、ある意味でハリボテの「偽神」とも言える。
さりとて「神」には違いない。
本家本元の「神」に及ばないにしても、見出した者に生涯の使命を与えることが出来るのだろう。
そして、それはマリカの永遠性と同じで少しずつ壊れていくのかもしれない。
永遠などないのだから。
つまり、壊れつつもその使命を全うせんとするのは、その者自身の意思なのではなかろうか。
■メリナについて
そうして最後の項目。
ソウルシリーズ通して火防女的ポジションのキャラは大抵ヒロイン的存在だった様に思われるが、今作ではまるで空気の様な存在で、今作はラニ、ラーヤ、ミリセント、セレン、ローデリカ、クララ、エンヤ、そしてトープスと魅力的なNPCが多いため、ヒロイン決定戦でも勝ち上がるのは難しい様に思われる。
メリナは“祝福で休む”と場所やタイミングによっては「メリナと話す」という項目が増え、どこからともなく現れるものの、1周目は祝福を灯すものの休まないことも多く、かなり見逃してしまっていた。
それも1周目はメリナの力を借りて拒絶の刺を焼いたため「狂い火END」も不完全なものになってしまい、2周目はほとんどメリナのために回ったと言っても過言ではないかもしれない。
そうして、2周目を終えた率直な感想としてはメリナ=ミケラなんじゃない?というものでした。
まず、最初の疑問はメリナが黄金樹の禁忌たる滅びの炎へと繋がる「ロルドの割符」を持っていることだった。
燃え続ける釜の火が不滅である以上、小さき巨人を火守りとして残しているとは言え、そこへ繋がる割符は他の大昇降機の割符よりも遥かに厳重に封印などされてしかるべきものだと思われる。
しかし、それがマリカから託されたもの(それがローデイルのどこに隠しているなどの情報でもよい)ならば、メリナはマリカと何らかの関係がある様に思われた。
そもそもマリカの子の中で、赤い髪を有していないと思われるのは、
ゴッドウィン(金髪)、ラニ(不明)、ミケラ(金髪)の3名で、ゴッドウィンは実質的に自ら殺している様なものだが、彼の性格や思想や律はほとんど描かれておらず、その理由は不明。
(ただ黄金律に属するデミゴットが、古竜信仰=排斥された「律」を掲げていることから、恐らく二本指には目を付けられており、逆にそのゴッドウィンを殺すことで二本指の信用を得ようとした?)
しかし、ラニの計画には手を貸していたことから、黄金律原理主義の父・ラダゴンに反発しマレニアを救うべく新たな律を模索していたミケラにも何らかの手助けをしているのではないかと思われるのだ。
その1つが「ロルドの割符」。そして、もう1つが「死のルーン」なのではなかろうか。
主人公が狂い火を受領した際、
“狂い火の王―即ち混沌の王になったなら…私は貴方を、殺すだろう”
“それが、貴方にルーンの力を与えた、責任だから”
と去ってしまい、
実際に混沌の王となると、メリナは主人公を殺しに向かう。
これまで閉じていた左目が開いており、閉じている状態であった獣の爪の様な刻印、そして瞳の色から「獣の瞳」を連想するが、混沌の王となった主人公は恐らくもう「神」であるから、「神殺し」の力が必要になろう。
作中で「死のルーン」にまつわる力はいくつか登場しているが、
“古い死の呪術”と呼ばれる霊炎は、発動時の紋章からラニの体に刻まれていた「死の呪痕」に近しいものと思われ、実際にラニがある程度自由にしていることからも“神を殺すには不十分”であろう。
マリカと獣の刻印とも関連がある「神を殺しうる力」と言えば、
「神狩りの黒炎」を振るったという「宵眼の女王」の力なのではなかろうか。
もし、マリケスから盗んだ「死のルーン」の“一部”に、その力を封じた「宵眼」があったのならば、それをミケラに間違いを正す力も託していた、と繋がる様に思われた。
ミケラの聖樹があったのも割符は違えど同じロルドの大昇降機で至れる場所の先にあり、巨人戦争よりも後に陰謀の夜(ゴッドウィン殺害)が起きているため、恐らく陰謀の夜時点で「巨人たちへの山嶺」への道は断たれているかと思われるが、少なくともミケラはそれ以降も山嶺に足を踏み入れている様だ。
「ソール城」の屋上に、
ミケラが友・ゴッドウィンを助けようとしていたが、成功しなかったことを詫びる霊が居り、
エブレフェールに各地の霊廟にあった“魂なきデミゴッド”(マリカの醜い落とし子=忌み子のデミゴッドが素体?)と極めて似たものがあっため、自らの信徒(?)達にも研究を願い、自らも研究をしていたのかと思われる(霊廟内にある調度品から、恐らく永遠の都由来の技術)。
もしミケラがマリカから「巨人たちの山嶺」へ至る割符を託されていたのなら、メリナが所持していることに疑問があるが、ミケラとメリナには何らかの関係があったのかもしれない。
この時点で“黄金樹でメリナに使命を授けた母”が、ミケラもしくはマリカ(即ちメリナ=ミケラ)の様に感じ始める。
次に気になったのが、
メリナが“黄金樹で母から授かった”という使命を忘れている(探している)点である。
不測の事態があって記憶喪失になったのだろうが、自らがそれを“忘れている”と認識できる程にメリナの奥深くに刻まれている様で、母がマリカであれば“使命の刻印”を連想する。
ただ、メリナ自身が
“焼け爛れ、霊の身体となってまで、生き続けている理由を探している”
と言っていたが、その身を焼いた火が“滅びの火”ならば―黄金樹が焼ける様に―マリカの使命の刻印も焼けて壊れてしまっていてもおかしくはないだろう。
そのため初めて出会った際、指の巫女のことを「指の巫女“様”」と呼んでいたことから、元々身分の低い者なのかとも思ったが、記憶喪失のため=滅びかかったためとも採れるかもしれない(マリカの刻印は黄金樹由来のためひどく火に弱いが、“ミケラの無垢金”は溶けても残り得ることが、滅びの火に焼かれてもまだ生き続けられている?)。
また1周目で偶然見れたイベントだったのが、何故かメリナはボックのことをやたらと気に掛けているのだ。
“メリナは身分が低い?”という疑問もあったため、当初はメリナがボックと同じ亜人故に気に掛けているのかとも思ったのだが、
“…貴方のお針子、ボックさん”
“時々、泣いているの”
“お母様が恋しいみたい”
“美しいと、言って欲しいって”
“…母とは、母から産まれるとは”
“皆、そういうものだろうか”
―2度目のボックへの言及の際の言葉は、まるで“自身が母から産まれていない”様にも感じられた。
母から授かった使命が思い出せない中、母への深い愛慕を覗かせるボックに興味を持っただけではこの言葉は出てこない様に思われ、メリナは記憶喪失で母との記憶を失っているのではなく、母との思い出がほとんどないのではなかろうか。
もしマレニアとミケラが琥珀のタマゴ(星光)から誕生していたのであれば、ミケラが黄金律原理主義者のラダゴン(大分蝕まれている状態?)との祈祷で語り合う一方でマリカとの関係性が見えてこない状況とも合わせ、メリナとミケラの近似性が見えてくる。
そうして「巨人の火の釜」での出来事である。
大罪を犯そうという直前、何故か主人公は気を失うのである。
メリナが主人公の体に触れた後のことであるから、眠らされた様に感じられた。
何故、メリナが主人公を眠らせたのかと言えば、“過去の失敗”を繰り返さないためかと思われる。
そうすると、火に身を投げたというベルナールの巫女はメリナだったのではないだろうか。
ベルナールは王に相応しい器であったが―優し過ぎた故に―自らがその身を焼いたことでエルデの王を目指すことを止めてしまった。
接し過ぎたために情を沸かせてしまったから、主人公とは出来得る限り距離を置いた。
自らが炎に焼かれゆく姿を見せたことでベルナールの心を折ってしまったから、主人公には見せない様にした。
しかし、そもそも狭間の地では“眠りの力”は非常に希少である。
その使い手では聖女トリーナという、忽然と現れ忽然と消えていくという謎めいた人物と、眠りのドローレスという、かつての円卓の一員で百智卿ギデオン批判者であり友であったという男装の麗人で、セルブスが何らかの理由でひどく気に入っていた人物くらいであろうか。
まず眠りのドローレスはトリーナの矢の使い手と言われているが、狭間の地を回り尽くしても入手出来るトリーナの矢は限られており、眠り効果を持つ矢は作れるものの、“トリーナの矢の製法書”はない。
そのためトリーナの矢を常時使用するような戦闘は難しく、トリーナを矢を大量に持っているだとか、製法を独占しているのではなく、ドローレス自身が眠りの力を持っていたと考えることもできるのではないだろうか。
そして、聖女トリーナと言えば「儚い少女とも少年」とも言われるハズだが、
その聖女トリーナの意匠が彫られている「トリーナの灯火」では“大人びてどこか恐ろしい”という。
“薄紫の火”に“単眼”―まるで混沌の王となった主人公を殺しに向かった薄紫色の左目を開いたメリナの様である。
もし、聖女トリーナ=眠りのドローレス=メリナ=ミケラだとすれば見えてくるものもある。
ミケラのスイレンと、トリーナのスイレンは極めて似ているが、
永遠に幼い宿痾を持つと言われるミケラは“愛するを強いることができた”という。
それは言うなれば“洗脳”の様な力で、“強い催眠能力”とも表現できる様に思われる。
ただ、洗脳と考えると2つの疑問に応え得る。
まず1つ目が、「朱い腐敗」は記憶を壊すといいラダーンは完全に自我を失っているが、何故マレニアはミケラのことだけは覚えており守り続けていられるのか。
もちろん、「ミケラの針」でそれを抑えているのも理由の1つだろうが、
“兄さまが、約束を違えるはずがない”
“神の知恵、神の誘惑。ミケラこそ”
“もっとも恐ろしい神人なのだから”
という、マレニアの防具に秘められた言葉には違和感があった。
ミケラは母への愛に飢えてか、あるいは力を使い方を分からずにマレニアに自分を愛することを強いてしまったのではなかろうか。
「朱い腐敗」という外なる神の力であっても、同じく神の力ならば抗し得る様に感じられた。
そしてもう1つが、
血の君主モーグである。
彼の持つ聖槍が「外なる神との交信の祭具」であることから、血の底で見えた「傷を望む真実の母」とやらも外なる神なのであろう。
神と出会ったことで初めて生まれついた穢れを愛せる様になり、「“名も無き者、弱き者(=黄金樹から祝福されていない者達)”をこそ祝福する」というミケラに惹かれ伴侶として王となろうとするまでは分かるのだが、どの様に聖樹に辿り着き、聖樹と同化してるミケラを攫い得たのか(「典礼街オルディナの南東に「モーグウィン王朝」行きの転送門はあるが、逆はない)。
また永遠に幼いというミケラが、
「左手で抱えられる程の大きさ」から遥かに大きく“成長している”ことに、何故疑問を持たないのか。
さらには、黄金樹を愛したモーゴット(マルギット)が、君主連合(恐らくゴドリックやゴドフロア達)からローデイルを防衛しようとすることは理解できるが、
何故モーグが自らを忌み子として排斥したローデイルを防衛することに手を貸すのか。
(“君主連合、内から瓦解し敗軍となる。血の陰謀、その痕跡あり”)
もちろん、その理由を想像で埋めることは可能であるが、その相手が“愛するを強いることができた、もっとも恐ろしい神人・ミケラ”であることを思うと、ローデイル防衛に力を貸して貰う代わりに“身”を捧げることを約束したのではなかろうか(恐らく本当の目的はモーグに攫って貰い、二本指の監視から逃れ隠れること)。
ミケラはマレニアの宿痾に無力であった黄金律を見限り、聖樹に宿ることでマレニアを救い得る新たな「律」を産み出そうとしていた様だが、
“聖樹は醜く育ち、美しい聖樹は見果てぬ幻想となった”という。
しかしながら、聖樹に宿るミケラがモーグに攫われたことが原因ならば「大きく育たなかった」だとか「枯れてしまった」というような“上手く育たなかった”に近い結果になりそうなものである。
そのため、聖樹が醜く育ってしまった近くに居たマレニアの「赤い腐敗」か、モーグが攫う際に「傷を望む真実の母」の影響を受けてしまったか、ミケラの内に「醜い“何か”」があったからなのではなかろうか。
モーグがマレニアの様に翼を生やすのは、血の閨を共にしたことでミケラの“肉体”に残る神性を宿したからかと思われる(ミケラと双子のミレニアは翼を生やす)。
同様にミケラが同化した聖樹も、ミケラの肉体の神性を宿した(吸い取った)からこそ―赤い腐敗に冒されつつも―あれ程の大きさに育ったのではなかろうか。
つまり「ミケラのスイレン」と「トリーナのスイレン」が極めて似ているのは、ミケラが取り除きたかった「律(=神性)」が抜けた結果―黄金樹に見捨てられ祝福が褪せた(瞳に金色の光が宿らなくなった)者達の様に―「ミケラのスイレン」が色褪せ「トリーナのスイレン」となったのではないだろうか。
結果として、“愛するを強いることができた”という“神の誘惑―強い催眠能力”は、“弱い催眠能力―安らかな眠りをもたらす程度の力”になった様に考えられる。
すなわち、メリナは“褪せたミケラ”であり、マリカの娘という結論に至った。
“…貴方がもし、狂い火に向かっているのなら、それだけはやめて欲しい”
“あれは触れざるもの―全ての生を、その思いを喰らう混沌”
“この世界がいかに壊れ、苦痛と絶望があろうとも、生があること、産まれることは…きっと、素晴らしい”
“…もう一度だけ、言わせてほしい”
“狂い火に向かうのは、やめて欲しい”
“貴方に、王を目指す貴方に、生があること、産まれることを、否定してほしくない”
“…そんなものは、王ではない”
“生なき世界に、王などいるものか”
“お願いだ。もう、やめてくれないか”
“狂い火の王など、王ではない”
“生なき世界に、王などいるものか”