◆蟻の王 メルエムについて
恐らく単独では作中最強のキャラクター、蟻の王メルエム。
その名は“全てを照らす光”という意味を持つという。
以前に比べ、特質系能力にアタリが付いた部分もあるため再考してみました。
(正直あまり大きな変化はなかったため、焼き直しに近いかもしれないが、複数の記事に跨っているメルエム関連の記事を1つに纏めてみました。)
◆目次
┣能力について-1 (食事:MOPの増加と肉体の回復)
┣能力について-2 (食事:食べた相手の発も奪える?)
┣メルエムがコムギと出会わなかった場合
┣誰の言葉か(貴様は…!!そう……貴様は…詰んでいたのだ 初めから)
┗薔薇毒は治せなかったのか
◇能力について-1
メルエムの能力は、食べた生物のオーラの“何割か”を自分のモノにできるものかと思われる。
ピトーの所見によれば“食べた獲物(レアモノ)のオーラを食べることで自分のものにできる”というものであったが、若干疑問もある。
まずそもそもだが、メルエムが増やしたオーラとは実質的に最大容量(MOP)かと思われる。
イズナビがクラピカのAOPから、オーラの絶対量(=オーラの総量)がかなり増えていることを指摘していたが、念に目覚めたばかりの蟻達がいくらオーラの総量が多くとも、修行不足により体外に出せるオーラ(AOP)が少なかったならば、討伐隊に苦労はなかったハズだ。
そのため恐らく、MOPと最低AOPは比例関係にあるのかと思われる。
クラピカのケースは、
“緋の目になるとさ…特に怒って緋の目になると理性を失ってすごい力がでちゃう”
とパイロが話していた様に、クラピカだけの性質ではなく恐らくクルタ族という種族の特性が関係しているのかと思われる。
クルタ族は特質系のオーラを生まれ持つ血統だが、その強すぎる力に肉体がセーブを掛けて、より近い念系統に変わるだけではなく、使用できるオーラ量にも制限が掛かっているのではなかろうか。
クラピカの例では、緋の目になったことにより、MOPの最大値が増し(制限が外れ使用できるオーラ量が増え)、それによって最低AOPが比例して増えたため、「纏」状態のクラピカを見てイズナビは気づいたのだろう。
そしてメルエムの例では、食事によりMOPの最大値が増え最低AOPも増えたため、ピトーはその能力に気づけたのであろう。
次に、オーラの獲得割合について。
恐らく、100オーラ分食べたら、100オーラ分増えるということではないと思われます(獲得割合は不明)。
と、いうのも生まれた直後のメルエムは腹を空かせていたが、不味いモノは口に入れても吐き出していた。
しかし、農村の親子を襲った際には“腹はそこそこ満ちておるしな”と言っていたことから、亀爺やペギー(ペンギン型の蟻)を食べたのは、
パンダの口ぶりからも、メルエムかと思われる。
(食べ跡が汚かっため、農村でユピーががっついていた様にメルエムが食べた後に“余りを”ユピーが食べた?)
亀爺やペギーも恐らく師団長で、ペギーには元々ラモットのオーラが視えていたが、亀爺はどちらにせよ授与式で念を使える様になっていただろうから、メルエムはこの時既にレアモノ=念能力者を食べていたことになる。
そして、護衛軍の性質上メルエムが食事中に近くから離れることもないだろうが、ピトーは―その時の様子も視ていたハズにも関わらず―王の能力には気づかなかった様である。
亀爺もペギーも一見して戦闘型の蟻ではない様子であるし、さほどオーラ量も多くなかったのではなかろうか。
もし、メルエムの能力が食べた分をそのまま増やせるならば、その時に気づいてもおかしくないため「食べたオーラの一定割合を自分の物とし(MOPの最大値増加+POPの回復)」、かつ「MOPと最低AOPの比例関係」という2つの要素がそれを分かりづらくさせていたのではなかろうか。
そして、もう1つの性質として肉体にダメージがあった場合は「肉体の回復(再生)」も可能な能力なのかと思われる。
これは、爆心地で瀕死の状態のメルエムを発見した際、
“ピトー(宮殿)までは王がもたねぇよ!!”
と叫ぶユピーに対し、
“大丈夫……!!” “私が王を救う!!” “私を召し上がっていただく”
とプフは言葉にしたところからもそう採れるかと思われる。
蟻が全般的に食事を取れば肉体のダメージ(損傷)を回復する様な描写はなく、プフは何かに気づいた(思い出した)かの様な表情を見せていた。
恐らく、メルエムが自ら腕を引きちぎりピトーの治療を受けていた際に何らかの食事を取って(一定以上のオーラを持っていた者でないと“不味い”と吐き出すため、供された食事はいわゆるレアモノ)、その時に一定以上の回復を見せたのではなかろうか。
一分一秒を争うような状況で、プフも一か八かの賭けには出ないであろうことから、プフはそれを思い出し“私を召し上がっていただく”という選択を取ったのだろう。
そして、これはキメラアントの持つ摂食交配の“王版”とも言える能力かと思われる。
以前、摂食交配について考えたことがあるが、女王の摂食交配は、自らの生殖機能と念を掛け合わせたものと考えられる。
(参照:→摂食交配について)
厳密に言うと、気に入った種(人)を改造する(自分の子として作り変える)能力なのだろうが、女王はその能力を“子に適用”させていたが、王は“自らに適用”させているのであろう。
女王が“より強い王を産むため”にと、1日250体分の肉団子を食していたことから、これは上図でいうところの「+栄養素体(オーラ)」の部分で、この部分が食べれば食べる分だけ強くなる=MOPの最大値を増やすという部分に当たるのかと思われる。
恐らく蟻は血統的に特質系が多く、特に摂食交配を引き継ぐ様な者は特質系かと思われる。
“食べれば食べる程強くなる”なんていうと、強化系の様にも考えてしまうかもしれないが、継続型のBP強化(爆肉鋼体)や、基本的に使い切りの様子であるAP強化(ジャジャン拳グー)等はそれを使用中は常に強化分のメモリを割いている事になってしまうだろう。
あるいは“食べれば食べる程(一時的に)強くなる”なんていうと、ナックルの「天上不知我独損(ハコワレ)」がオーラを相手に貸し与えていた様に―タイソンの霊獣が放出系で徴収型の能力を持つことから―相手から奪ったオーラの一部を自らのAOPとして一時的に利用して強くなっていると考えるならば放出系の様にも思われる。
しかし、いずれも制限付きの強さだったり、一時的な強さだったりとやや想像から外れてしまっている様に思われ、同様の理由から具現、操作も除外、変化も当てはまらないことから、メルエムは特質系で良いかと思われる。
加えて、クラピカの発言から特質系の念習得パターンが1つではないということが判明したが、後述のユピーのサイコガン(仮)を十分に使いこなし、食事の際の“回復”は強化系に属する力かと思われるため、
メルエムは放出と強化の間に位置する特質系の様にも思われる。
◇能力について-2
“我の能力…我の為にあらず!!”
“王にお渡しする為のものだったのだ!!”
“ユピーの翼や砲撃のみならず、私の鱗粉乃愛泉(スピリチュアルメッセージ)も…!!”
“より高い次元の能力として見事に昇華されている…!!!”
と、ユピーとプフは考えていたが、「めだかボックス」の黒神めだかの「完成(ジ エンド)」(※認識した能力・才能・技術の完成度をさらに高めた上で使える能力)の様な性質も、果たして王の食事には含まれるのか。
私は否定派です。
恐らく“能力”というより、
“経験によるスキル”に近いもので、精神の共有状態と、軍儀で養った理解力の高さに基づく再構築―いわばジンの“マネ”に近いものかと考えています。
順番に考えていくが、まずは翼について。
見た目は確かにユピーの翼とそっくりではあるが、
そもそも、元々女王もメルエムも翼が生えそうな部位が存在している。
現実世界の蟻に「有翅蟻(いわゆる羽アリ)」と「無翅蟻(いわゆる普通のアリ)」がいるが、これは別種の蟻ではなく、繁殖期に羽を生やし、それが終わると羽を落としているという。
キメラアントという作中通りの蟻は現実世界にはいないものの、現実世界の蟻の性質を作中に落とし込んでいるであろうことを思うと、特に元々繁殖を行うキメラアントは潜在的に羽を生やすことが可能であったのではなかろうか。
そう考えると“生まれた時から我が身の一部だったかの様な自然さ”という言葉や、ユピーが自由自在に飛ぶまでに時間を要したにも関わらず、メルエムは最初から飛行可能だったことにも繋がる様に思われるのだ。
“無尽蔵に…感じられたユピーのオーラも度重なる…変形によって確実に消費され続けており…”
という神の声(ナレーション)から、変形は魔獣の性質ではなく念の作用だと判明しており、
(強いて言うならユピーの素材となった魔獣はその変形を得意とする魔獣であったのかも?)
変化系(自らの肉体にオーラの性質を付加=形状変化を可能にする)、具現化系(ツボネ式具現)、あるいは元から生やすことができるならば蟻はいわゆる万能細胞のようなものを持っていて強化系(細胞の活性化)、はたまたイルミが針を使って変身していることから操作系(ルールの創出と強制?)など複数系統でもって可能と思われる。
次にユピーの砲撃だが、
上腕部分に関しては、確かにユピーの“ソレ”と言わざるを得ないだろう。
オーラを飛ばす際には体内のオーラの流れを操作する必要があるらしいが(ビスケ談)、ユピーやメルエムの砲撃は体内のオーラを物理的に腕ごとポンプの様に変形させ圧縮し打ち出しているのだろう。
しかし、クロロの「盗賊の極意(スキルハンター)」が盗むまでに厄介な段階を踏む必要があり、
ゼノの見解からも―女王の摂食交配のルールから見るに―条件が死後24時間以内にその者を食べるだけ(それも自分で殺した相手でなくともよい)、というのは能力の効果に対して緩すぎる様に思われるのだ。
そもそもこの時のメルエムの状態は、かなり特殊な様に思われる。
この時のメルエムはプフやユピーと肉体も精神も繋がってしまったと話していたが、元々それも能力の仕様なのか。
ともすれば、ジャイロの様に色の強い者を食べた時は―幽白のグルメじゃあないが―内から食い破られてしまう危険性もあったのだろうか。
また、もしユピーの変形が魔獣特有の細胞(変形を可能とする万能細胞の様なもの?)に由来するとしたら、メルエムは食事の度に相手の細胞を新たに自らの肉体に取り入れているのだろうか。.
そうだとすれば、メルエムは食事の度に精神的にも肉体的にも影響を受け、むしろ生物的な不安定さを逆にもたらす様に思われる。
恐らくそれは基本構造の作り変え部分に相当し、薔薇の爆発から生還した際に肉体的な見た目の変化が起きていないことからも、新たな細胞を取り入れて新たな肉体を得たのではなく、女王の摂食交配によって完成した最終構造=“王”という固有種に回帰(回復)していたのかと思われる。
そのため、メルエムが意識混濁下に発動したため正しく発動しなかった(エラーが生じた)という可能性もあるのだろうが、食べた相手(プフとユピー)が分身の様な能力を有しており、本体と食べられた部分(分身)でそれぞれで“個”を保つことができ、食べられた後もその本体が生きている点が大きかったのかと考えています。
加えて、まだメルエムが完全に消化しきれていない=まだメルエムの体内でプフとユピーの細胞が生きていることが、共有状態に繋がったのではないでしょうか。
砲撃の再現も、
追ってくるポットクリンと、ユピーの“敵本体にダメージを与えなければ…消えませぬ”という言葉を受け、メルエムは攻撃しようと“間接攻撃”を想像し、精神が繋がっているユピーが砲撃を連想し、それを無意識に構築した結果なのではなかろうか。
そうして最後のプフの「鱗粉乃愛泉(スピリチュアルメッセージ)」について。
“「円」で触れた者の感情を読み取れる様になった”
“此奴の余へ向けられたただならぬ敵意もな”
“一度余の円にさらされた者の心は目をこらすだけでよく視えるわ”
―などとメルエムは話していたが、果たしてこれは「発」と言えるのか。
そもそもプフの能力は、
相手の周囲を鱗粉で覆い、オーラの流れを鮮明にすることで相手の精神状態を知ることができるものである。
恐らく自らの鱗粉を媒介にした操作系に属する能力かと思われるが、オーラにはその者のありとあらゆる心の動きが作用し、オーラにはその者の心が表れる。
そしてプフの能力は元々オーラに表れる感情を鱗粉を用いて“鮮明”にしているだけで、
その精度は相手のオーラの強弱や個人の資質や経験等によって大きく異なるだろうが、本来的には誰もが感じうるものかと思われる。
オーラの持つ知覚能力で術者から離れたモノを探ることが出来る技術が「円」で(≠系統別の技術)、その範囲が広いほど大量の情報処理を迫られ神経を削るためか、これまでの術者は対象の形や位置や動きを探る程度ではあったもの、
「円」が得意だったピトーはメルエムの発しているオーラからその精神状態を「円」で把握することも可能であった。
王の「円」はオーラを無数の光子に変えて周囲に放っているという。
恐らくこの“光子”は、メルエムが感知することを意識した際に精神共有状態のプフが連想した「鱗粉乃愛泉(スピリチュアルメッセージ)」に潜在的に影響を受けた結果として、メルエムがオーラで鱗粉を模したのかと思われる。
そして、その光子は“消える事なくあり続け、一粒一粒は極微小ながらオーラ出し続けて”おり、メルエムは“光子が付着した物の形態や性質、感情等の情報を読み取ることが出来る”という。
そして、“最初の「円」で全身に光子を浴びた者の探索は至極容易”というが、逆に言えば最初の「円」で浴びた光子だけでそれは出来ず、新たに光子を飛散させなければそれは出来ないのだろう。
恐らくここからメルエムの「円」の性質が読み取れるのかと思われる。
まず、通常の「円」はAOP型かと思われる。
遠隔操作(リモート)の「発」が術者の気絶で消えたり、AOP型の「発」を解除すればその「発」に用いたオーラを回収・再利用できることから(=AOPを共有をしている)、AOP型の能力は例え術者と肉体的オーラ的に離れていたとしても(=単純乖離)、目に見えない繋がりがあるかと思われる。
そして、それがあるからこそAOP型はオーラの知覚能力も共有できるのかと思われる(コルトピのコピーが「円」の役割が果たせるのもこれが理由だろう)。
しかし、光子は“極微小ながらオーラ出し続けている”のだとしたら、なぜパームの場所を探す時に新たに光子を撒く必要があったのか。AOP型ならば感知できる様に思われるのだ。
つまり、“消える事なくあり続け…極微小ながらオーラ出し続けて”いる光子は、EOP(放出系の力によってAOPから切り離されたオーラ)なのではなかろうか。
最初の「円」で“何かに接触した光子”は切り離し(EOP化し)、“何にも接触することのなかった光子”はそのまま回収(AOPのまま)したから、パーム探索時に既にパームに付着している光子を感知できなかった(EOP化によって術者との共有が切れている)のかと思われる。
そして、新たに撒いた光子(AOP型)で感知が出来た理由は、スタンドアローン状態の切り離された光子(最初の円でパームに付着したオーラ)が蓄えてた情報と―まるでシナプスの様に―繋がって情報を得たためかと思われる。
(新たに撒いたAOP型の光子と、最初の「円」で付着したEOP型の光子が接続して情報を得た)
恐らく、パームに付着した光子もずっとパームに付着しているのではなく、振動や摩擦などの“刺激”によって剥がれ落ち、新たなに撒いた光子がそれと結びついて―ヘンゼルの撒いたパン屑の様に―道しるべになっていたのではなかろうか。
以上のことから、メルエムの「円」とプフの「鱗粉乃愛泉(スピリチュアルメッセージ)」は別物で、精神共有によって影響を受けている可能性はあろうが、メルエムは食べた者の能力を自分のモノと出来るわけではないと思われる。
まとめると、メルエムの食事は摂食交配の王版とも言えるもので―
食べた生物のオーラの“何割か”を自分のモノにでき(MOPの最大値の増加とPOPの回復)、肉体の再生も可能な特質系の能力で食べた者の能力を獲得できる能力ではない
―かと思われます。
そして、メルエム自身は放出と強化の間に位置する特質系能力者かと思われます。
◇コムギと出会わなかった場合
メルエムはコムギと出会いと軍儀を経て、“蟻”から“人”になり、予知のごとき先見を得た。
しかしもし、メルエムがコムギと出会っていなければどうなっていたのか。
そもそもの戦況が大きく変わっていたと思われる。
まず、コムギがいなければメルエムは「龍星群(ドラゴンダイヴ)」が落ちた際も西塔2階の迎賓の間には向かわず、玉座の間に居たであろう。
そして、コムギとの出会いがなければ、
“人間に家畜以上の感情を持ち得ず”、豚や牛の“戦う場所を変えたい”という思惑に耳を貸すこともなかったでしょう。
つまり玉座の間で戦闘は開始され、玉座の間にはすぐさまプフとピトーが駆け付け、遅れてモラウが、それからゴン・キルアが到着し、
ネテロ・ゼノ・モラウ・ゴン・キルア VS メルエム・ピトー・プフ
という大混戦が展開されたのかもしれない。
(百式観音の攻撃スピードを考慮すれば、ネテロ・ゼノ VS メルエムが開始し、それから順々に加わる感じだろうが―)
メルエムは予知のごとき先見もなく、
柱を使った跳躍(次撃までの短縮)も使えず、ゼノからの横槍も入る事から多少苦戦する様にも思われるが、恐らく逆に早期に戦闘は終了したのではなかろうか。
何故なら、ネテロがメルエムに対し善戦でき、戦闘が長期化したのは(といっても恐らく長くても3分程度だろうが)、メルエムが自らの名前を聞くためにネテロ不殺と、ネテロの正確無比で超速の攻撃を軍儀や将棋等の盤上の遊戯に見立て、ネテロの出せる手(百式観音の掌)の型を出し尽くさせ、その組み合わせを読み切り、無数にそそり立つ針の穴から正解を導くをことを自身に強いたため、とも言える。
盤上遊戯の種類によって駒の能力は異なるものの、基本的に各々の駒の“強さ”は同一である。
例えば将棋ならば、自分の歩が進む先に相手の歩がある場合、問答無用で相手の歩を取ることが出来る。
当然、相手は手番を無視してその攻撃を防ぐことも躱すことも反撃して勝つ様なことは出来ない。
つまり、その戦いを盤上の遊戯に見立てたメルエムはネテロの放った手に対し、取られる駒同様に抵抗をしていないのである。
しかし、メルエムがコムギに出会わなかった場合、容易に勝てる盤上の遊戯に魅力を感じるハズもなく、無抵抗に攻撃を受ける理由もないことから、ネテロの繰り出す掌に対して反撃をするかと思われる。
メルエムの攻撃力がどれほどかはわからないものの、“メルエムは百式観音で殆どダメージを受けず”、掌よりも威力の高い“零でさえも大したダメージを与えられなかった”状況から、「ネテロ<攻防力<メルエム」なのは明らかであり、その力を攻撃に転じさせれば百式観音の掌を弾くどころか破壊すら可能の様に思われ、
それは戸愚呂弟VS玄海の様に、早すぎる決着に行き着くのではなかろうか。
もちろん、ネテロの死は薔薇の開花を意味するから、ネテロとメルエムだけではなく、近くのゼノ、ゴンやキルアを始めとした討伐隊や護衛軍、上空にいるシルバ、王宮前に居た東ゴルドーの国民ら全員が死ぬという最悪の結末になったのだろう。
…まぁもっと最悪なのは、ネテロが死に薔薇が開花する際にメルエムやピトーが爆発(ネテロの死体から高まるエネルギー)に気づき、全力で遠方(薔薇の毒が届かない距離)まで、跳ばれることだったのかもしれないのだが…(恐らくそうされないために、わざわざネテロはより狭く不利になりうるにも関わらず地下に潜ったのだろう)。
◇誰の言葉か
ネテロが自爆する直前の言葉―
“貴様は…!!” “そう……貴様は…” “詰んでいたのだ” “初めから”
―は果たして誰の言葉なのか。
1:ネテロの言葉なのか、2:二人の言葉(会話)なのか、それとも3:メルエムの言葉なのか。
アニメは3ですが、アニメ制作陣の解釈が必ずしも正しいとは思っていない。
(1~2cm程度のキメラアントが普通に“内”の世界に居て、カイトがその巣の近くで普通に釣りをしていて、さらには「気狂いピエロ(クレイジースロット)」の銃が普通にマシンガンの様な爆音を出して、銃のピエロが“もっと派手にやろーぜぇ”等と言っちゃう様なオリジナル要素から蟻編のアニメは始まっており、恐らくアニメ制作陣は“独自解釈”で制作していたのではなかろうか)
私は2:二人の言葉(会話=心滴拳聴)だと考えています。
まず、“詰む”という言葉は“(自分が相手を)詰んだ”際も、“(相手から)詰まれた”際も使い得る。
実際に作中でも、
メルエムは相手を詰んだ時も相手から詰まれた時も“詰み”と表現し、
プフも後者の意義で用いていた。
つまり、ベクトルの方向に関係なく物事が立ち行かなくなり、もう解決方法などが見つからない状況を指す言葉として使われているのだろう。
次に、ネテロがメルエムを“貴様”と呼ぶことに対して若干の違和感はあるのかもしれないが―、
内心:奴、産まれたての餓鬼、“貴様”、お前、虫、蟻の王
言葉:王、お主、蟻の王、メルエム、お前さん
―と、ネテロが用いたメルエムの呼称は1つではなく、内心ではあるがネテロもメルエムを貴様と呼んでいる。
恐らく、ネテロの一人称も“ワシ”のイメージがありますが、“オレが求めた武の極みは…”と顧みていた様に、精神統一の業を経た結果、「心」も全盛期(若かりし頃)に近づいていることもその要因かと思われます。
メルエムは無論のこと、ネテロも、
“正確無比に最善手を打ち続けるしかない根気の勝負…!! 「それが尽きた時が貴様の潮時!!」だと思ってんだろ……?蟻の王よ 詰めるもんなら詰んでみな”
“そりゃ悪手だろ 蟻んコ”
と、内心や実際に口にしていることからネテロの口から“詰む”という言葉が出て来ることにも特段おかしさはない。
そして、虚栄の類ではないネテロの様子や、わざわざ人気のないところに場所を移し、敗れた後に自ら命を絶った状況からメルエムはネテロが“敗れた際の手を予め打っていた”ことに初めて気づいたのだろう。
つまり―、
(ネテロの予め打っていた手に気づいたメルエムが)“貴様は…!!”
(やっと気づいたメルエムに対し、ネテロが)“そう……貴様は…”
メルエム:“(ネテロは)詰んでいたのだ 初めから”(自分は詰まれていた)
ネテロ:“(メルエムは)詰んでいたのだ 初めから”(どう転んでもメルエムに勝ち目はなかった)
―という様な二人の会話(心滴拳聴)かと思われます。
メルエムだけの言葉だとすると、ネテロの手に気づいて“貴様は…!!”の後に、“そう……貴様は…”と落ち着いて再確認する部分に違和感を覚える。その再確認する余裕があるならば、全力でそこから離れる行動に移すべきなのではないだろうか。
また、ネテロが腹に入れていた薔薇は心臓の鼓動と連動しているというから、1秒に1回程度の鼓動の連続性が止まった時に作動する仕掛けだったのだろう。
全オーラを使い果たし、オーラ(=生命エネルギー)を全く伴わない元の120歳超の高齢の老人に戻り、最期の搾りかすの力をさらに振り絞って自らの心臓を突いた。
それによって完全に力を使い果たし体勢を維持することも出来なくなり、前のめりに姿勢を崩そうとしていたが―心臓が止まった後も長いと3~5分ほどは意識が続いている可能性があると言われているから―この段階ではまだネテロの意識はあるかと思われる。
加えて、右足を失った不安定な状態で前のめりになってしまったらそのまま地面に倒れ込むと思われる。
つまり、薔薇はネテロが前のめりになってから、地面に倒れ込むまでの間に起爆していると考えられ、“そう…貴様は…”と一拍置くような言葉もしくは思考を巡らすことは難しいと思われる(=心滴拳聴の可能性)。
“そう……貴様は…”と、肯定もしくは確認、そして一拍置くような様子があったのは、“メルエムの言葉”を受けての肯定と、ネテロが正に今際の際で果てる寸前だったためかと思われる。
そして、両者の“貴様は…”には言葉が終わってない様子があり、なおかつ漫画ならではの描写かと思われるが“詰んでいたのだ 初めから”を両者の間に置くことにより、1ページの右半分をメルエム、左半分をネテロという対比になっている表現なのではないだろうか。
―ただ、強いて言うならば両者が想像していた“初めから”はそれぞれで異なるのかもしれません。
恐らく、メルエムが思い浮かべた“初めから”は、
“ネテロ達と出会った時”かと思われる。
殺そうと思えば殺せた状況で、敢えてメルエムはそれをしなかったものの、もしその時にネテロを殺していても自分は死んでいた(“初めから”自分は詰んでいた=詰まれていた)。
対してネテロが思い浮かべた“初めから”は、
(上図をネテロは見てはいないが)“メルエムがこの世に生を受けた時”から、かと思われる。
メルエムの中身が「人」であろうと「蟻」であろうとも、外見が「蟻」である以上、
その二つは絶対に交わらない。
遅かれ早かれ方法はどうあれ、その蟻の王・メルエムは人に敗れる運命にあり、それを分かっているネテロが思い浮かべる“初めから”は“この世に生を受けた時から”だったのではなかろうか(“初めから”メルエムの生は詰んでいた)。
◇薔薇毒は治せなかったのか
メルエムは特質系能力者と推定され、特質系を“願望の成就・現実化が可能な念系統”と考えれば、薔薇の毒に冒されている者を治療する様な能力を生み出すことも可能だったのではないだろうか、と思ってしまうというよりも願ってしまったのだが、それは無理だったのだろうか。
(→参照:特質系能力について)
個人的にはメルエムは「千夜一夜物語(アラビアンナイト)」の様に、日毎夜毎と軍儀を打ち続けるもコムギに勝つことができず、結果として死ぬまで隠居する様な流れを期待していた。
(※アラビアンナイト…王妃が王に殺されないために毎夜面白い話を語り、佳境に入ったところで「続きはまた明日」と話を止めるということを続け最後には王の凶行を止める、という説話集)
クラピカの「律する小指の薬(ジャッジメントチェーン)」に類する能力でメルエムを縛る必要はあるかもしれないが、テンプレ好きとしては、幽白のラストの様に暗黒大陸編後少し時間が飛んで、ジャイロが―幽白の正聖神党によるテロ事件の様に―世界で同時多発的に事件を起こし、各地でこれまで登場したキャラが制圧していく中、メルエムらが隠居している地域(恐らく協会の管轄となったNGL)でも事件が起きるも、メルエムは「ふんっ」とか言いつつサクっと処理して「(コムギに対して)続きを打つぞ」と呼びかけ、事情を飲み込めていなかったコムギが「ハイ!!」と答えるシーンがあったら「さすとが!さすとが!」とニッコリするのだが、最早色々な意味でそれは適わないだろう。
(メルエムが部屋に入る際に「今度は守れたな…」とちょこっと口角を上げるシーンが入ると尚マル)
妄想はさておき、結果的としてメルエムとコムギは助かっていない。
その理由はなんだろうか。
1:そもそも薔薇毒の解毒は無理
通常、毒を用いた兵器を使用する時、その解毒薬も用意するのが普通である。
(むしろ解毒ができるからこそ交渉にも使え、兵器たりえる)
しかし、もしこの薔薇毒は感染しないことこそがその唯一の回避手段で、一度感染したら誰にも解毒できないものなのもしれない。
もし薔薇毒が五大厄災の1つ、双尾の蛇ヘルベルの毒を弱毒化したものだったりしたら、その可能性もありそうだが、ジン曰く五大厄災の中で、“内”の世界でも犠牲者が見つかっているのはアイとパプの2つと言われているため、この読みは詰んでいたのだ。初めから。
ひとまず、“一度感染したら解毒が極めて難しい”ならば―メルエムが特質系であることを思えば―その力の全てをコムギを治療することに注げばその能力が生まれていてもおかしくない様に個人的には感じられるため、その理由はわからないが解毒自体が不可能な毒としたパティーン。
2:メルエムの“願い”故
特質系の核心部分は術者の“願望の現実化”かと考えている。
そして、1で少し触れているのが、メルエムの願いが“コムギの治療”だったため―ネオンが自分自身の未来は占えなかった様に―自分の治療が出来ない能力だったのではなかろうか。
ネオンは銀河の祖母に影響を受け、
“今生きている人を幸せにしたい”
“占い師になりたい”
という願いを無意識に現実化させたのが「天使の自動筆記(ラブリーゴーストライター)」かと思われるが、その願いの“元”から、その能力の対象は生者かつ自分以外(憧れたのは“占い師”で、あくまで“自分以外を占う存在”)になったのかと思われる。
メルエムの願いは、
コムギに会いたい
最期をコムギと打って過ごしたかった
というもので、自らの死を享受してしまったことがその理由なのかもしれない。
―ともすれば、連鎖被毒して苦しむコムギを見て、メルエムは薔薇の毒を治療する能力を生み出していたかもしれない。
しかしその効果は自分には及ばず、かつ回復したコムギは離れようとせず、治療と連鎖被毒を繰り返し、その能力を使えない程にメルエムは衰弱し最期を迎えたのかもしれない。
3:メルエムの念系統が治療に向かなかった
願望を成就させるのが特質系の核心だとしても、特質系の念習得度は1パターンではないことがわかった。
強化系が得意な特質系もいれば、反対に苦手な特質系もいる。
そして、メルエムは恐らく強化系と放出系の間に位置する特質系かと思われるが、“被毒前”に免疫力を「強化」して感染を防ぐことは出来ても、既に“被毒”して肉体が毒化してきていると、細胞の活性化をその核心とするであろう「正強化」は若い方がガン細胞をより早く増やしてしまう様にむしろ悪化させてしまい、逆に細胞の不活性化を核心とするであろう「負強化」は、毒化した細胞の量や臓器によってはそれを不活性化させることで逆に命に関わってしまうのかもしれない。
ただ、強化系と言えども、操作系や具現化系の能力を習得可能で、クラピカでさえも「“覚えた能力”であれば、いかなる系統のものでも100%の精度・威力で使用」可能だったことから、
メルエムの圧倒的な力の全てをかなぐり捨てる覚悟を持ってさえすれば、可能だったのではないかと“感じて”しまうのだ。
薔薇毒の解毒が、Lv9やLv10の強化系能力などを例に、メルエムが理論上習得できない高位の能力でないと不可能だったのだろうか。
しかし、空間を区切り遮断する能力を放出系と具現化系という相反する能力者が得意とする様に、実現しようとする能力が特定の系統でしか出来ない訳ではない。
例えば、切った相手を麻痺状態にさせる刀を考えた時―
刀に具現した神経毒を散布するという方法もあれば(具現)、
オーラに毒の性質を付加し、それを刀身に纏って切りつけたり(変化)、
愛用の刀で切った相手を操作し体を動けなくさせたり(操作)、
切った相手を弱体化させ体を動かせない状態まで衰弱させたり(負強化)、
切った相手を神経性の毒ガスが充満している空間に飛ばしたり(放出)、
―と、それに近い能力は様々な方法で実現可能かと思われる。
そのため、ある系統では理論上習得できない「発」だとしても、複数の系統を合わせたり、制約と誓約による底上げを前提に、メルエムが見せた比類無き力の一端と、予知のごとき先見を可能せしめたその頭脳をもってすれば、やはり解毒の能力の創出が不可能とは思えないというのが素直なところ。
―結局のところその答えは分からないが、2やその派生だとちょこっと嬉しいかもしれない。
最後は「蟻」ではなく「人」に成ったメルエムだが、「人」ほど“強欲”にはなれなかったというのがある意味で蟻編の答えなのかもしれないですね。
…ハンターハンターで個人的に一番好きなキャラクターってこともあって、どうもしんみりしてしまいますね。
と、そんな感じで元々は2記事に跨るものだったんですが、色々削って1記事に収めてみました。
以上です。